新生活を始める学生・社会人のためのアルコール理解ガイド
先月の24日、東京の井の頭恩賜公園で花見をしていた大学生10人が急性アルコール中毒等の症状で救急搬送されました。
井の頭公園で若者10人が搬送 飲み過ぎに消防庁が注意呼びかけ(2019.3.28) J-CASTテレビウォッチ
東京消防庁によると、今回の花見は複数の大学が集まるサークルの呼びかけがきっかけで始まったそうです。
今月からいよいよ新生活を始める学生・社会人の方は多くいらっしゃるかと思います。
新しい環境で様々な人と出会い、その過程でアルコールと接する機会も増えてくるのではないでしょうか?
しかし、アルコールについてどれだけ知識があるかと尋ねられると、自信のある方は少ないかもしれません。
この記事では、若い世代の皆さんに向けてアルコールの正しい知識を提供していきます。
お酒が原因のトラブルを未然に防ぐためにも、ぜひご一読ください。
目次
1. 飲酒の適正量
1日にどのくらいアルコールを摂取していいのか、疑問に思われる方は多いと思います。
飲酒の適正量については個人差があり、その日の体調等によって変化すると言われています。
ただし、厚生労働省が推進する「健康日本21」では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として以下のように定義しています。
1日あたりの純アルコール摂取量
男性 約40g以上
女性 約20g以上
これだけだとイメージがつきにくいかもしれませんが、ビールだと500ml缶1本、日本酒だと1合(180ml)が純アルコール量20gに相当します。
アルコール飲料によってどの程度が適正量なのかは異なります。
他にも詳しく知りたい方は以下のリンクから確認してみて下さい。
2. お酒の強さは人それぞれ
先ほど、飲酒の適正量には個人差があるとお伝えしました。
一般的に女性は男性よりアルコール分解速度が緩やかです。
アルコールは体内に長い時間留まると臓器に障害をもたらすと言われています。
つまり、同じくらいの体格の男女が同じ量を飲んだとしても、女性の方が臓器障害を起こす可能性は高いのです。
また体重差によっても酔いの状態に違いが出ます。血液中のアルコール量が増えればそれだけ酔いやすくなります。
従って、体重の軽い人(=血液量が少ない人)は体重の重い人に比べ酔いやすくなるのです。
他にも、未成年の場合はアルコールを分解する酵素が十分機能しないためアルコール摂取は危険とされ、高齢者の場合はアルコール代謝能力の低下から若い頃より酔いやすくなると言われています。
日本人は元々、アフリカやヨーロッパの人たちとは異なり、アルコールに強いわけではありません。
もちろん一部にお酒に強い方もおられますが、約半数の日本人は少量の飲酒後に顔の紅潮や動機、頭痛を起こしてしまうそうです。
冒頭で、複数の大学生が急性アルコール中毒で救急搬送されたニュースに触れましたが、日本人として決して人ごとにしてはいけない内容です。
「日本人はそもそもお酒に弱い」という認識は持っておくだけでも、いくらかの抑止に繋がるのではないでしょうか。
3. アルコールに関する様々な言説について
アルコールについては色々な言説が昔から見受けられます。
その中には正しいものもある一方で、誤った情報も少なくありません。
そうした言説の中から間違った内容のものを3つ取り上げて訂正していきたいと思います。
①お風呂とサウナでアルコールが早く抜ける
「お風呂やサウナに入り汗を流すことで、早くアルコールが抜ける」と言われることがあります。
しかし、これは大きな間違いです。
アルコールの10%は汗や尿で体外に排出されますが、この割合は入浴したとしても増えるわけではありません。
むしろ、汗をかくことで体内の血中濃度は高くなり、アルコールの代謝速度は遅くなってしまいます。
②寝ることでアルコールがすぐ抜ける
「睡眠を取ることでアルコールがその分早く抜ける」という話も一部で聞かれます。
しかし、これも正しくはありません。
アルコール摂取から十分に時間をおくことは確かに大切ですが、寝てしまうことはかえってアルコールの分解を妨げてしまいます。
これは睡眠によって、アルコールの90%を分解すると言われる肝臓への血流が緩やかになってしまうからです。
睡眠を取ったからと言って「これでアルコールが抜けた」と油断しないように注意しましょう。
飲酒の量によって、その処理時間を算出してくれるツールがあります。興味のある方は、ぜひご参照下さい。
参考: アルコール摂取量と処理時間 ~適性飲酒のススメ 飲酒習慣診断~ KIRIN
③酒は百薬の長
「少量のお酒は健康に良い」と昔から言われてきました。
しかし最近、こうした言説にも批判の目が向けられています。
2018年の8月にアルコールと健康に関して調査した論文が『ランセット』という医学雑誌から発表されました。
この論文は1990年から2016年まで195箇所、592の調査と694のデータソースを使用したもので、様々なアルコールと健康に関する論文を調べました。
その結果、アルコールは世界的にも病気の危険因子であり、その損失を最小化するには一切消費しない方が良いことが分かりました。
つまり健康でありたいのであれば、アルコールは摂取しない方が良いということになります。
もちろんお酒は、日々のストレスを発散するために、またコミュニケーションの1つとして役に立つ場合もあります。
しかし少なくとも「少量のお酒は健康に良い」という話にはならないということは、気に留めておいても良いかもしれません。
4. まとめ
今回は、若い世代の学生さんや社会人の方に向けて、アルコールへの理解を深めるための記事を書いてきました。
もしかするとこの記事をきっかけに、初めて知ったこともあるのではないでしょうか。
これから新しい生活を送っていく中で、アルコールと接する機会はこれまで以上に増えていくかと思います。
しかし、最も大切なのは皆さんの健康です。
これからも楽しく飲酒していくため、ぜひアルコールに関する正しい知識を身につけて下さい。
弊社では他にも「アルコール」や「アルコール依存症」をテーマに記事を執筆しています。
こちらも併せてご一読ください。
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参考:
・松本俊彦『大学生のためのメンタルヘルスガイド : 悩む人、助けたい人、知りたい人へ (大学生の学びをつくる)』(2016) 大月書店
・「アルコールが抜ける時間」4割が知らなかった!医師が教えるやってはいけない二日酔い対策(2018.12.20) FNN PRIME
ライター名: ブランコ先生