2018/11/14

ギャンブル等依存症対策基本法案が可決|私たちの生活への影響とは

国会議事堂 写真

平成30年7月6日、自民党、公明党、そして維新の党が提出していたギャンブル等依存症対策基本法案が参議院本会議で賛成多数で可決されました。

これにより、正式に国や自治体が法律に則り依存症対策を始めることになります。

最近では、同じく参院本会議でカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案が可決、成立したことで話題になりましたが、政府は今回のIR法案と並行しギャンブル依存症対策を進めています。

そこでこの記事では、ギャンブル等依存症対策基本法案とはどういった内容なのか、そして法案成立によって私たちの生活は何か変わっていくのか、それぞれ解説していきたいと思います。

目次

1. ギャンブル等依存症対策基本法案作成の背景や経緯

そもそもなぜ今回、このような法案が作成されるようになったのでしょうか?

大きな理由として挙げられるのが、以下の2点です。

・日本国内におけるギャンブル依存症者が多いこと

・依存症対策が従来あまり機能していなかったこと

平成25年度に実施された厚生労働省の調査によると、現在日本で「ギャンブル等依存症が疑われる者」として数えられる人たちは成人の4.8%、つまり約536万人と推計されています。

また、平成29年度の全国調査では過去1年以内のギャンブル等の経験において、ギャンブル等依存症が疑われる人の割合は回答者の0.8%だったと報告しています。

これは日本の人口で換算すると約70万人です。

上記の様な事実に対し、草の根レベルの活動はあったものの、国単位での十分な対策はとられずにきてしまったのが実情です。

今回の法案をきっかけに、事業者への対応はもちろん、依存症支援団体との連携や依存症教育の普及を図ろうという目標が法案設立の背景になります。

2. 法案の中身で使用されるギャンブル等依存症の定義とは

「ギャンブル等依存症」とは、どのような状態を指すのでしょうか。

今回成立された法案では「ギャンブル等依存症」の定義として、

ギャンブル等にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態

と説明しています。

ここで、社会生活に支障をきたしている例として、ギャンブル等依存症になることで、借金が高額になり生活が立ち行かなくなることや犯罪のリスクが上がることが考えられます。

ギャンブル等依存症対策を総合的に行うことで『国民の健全な生活の確保』を図り、国民が安心して生活できる安心安全の社会の実現を目指すため、ギャンブル依存症対策法案が制定されました。

メディアを通して「パチンコが果たしてギャンブルに入るのか入らないのか」の議論を耳にします。

今回の法案では「パチンコ」も対象です。

3. 法案成立にあたり進められる施策

可決で進む主な取り組みは、以下の10個です。

①教育の振興等

②ギャンブル等依存症の予防等に資する事業の実施

③医療提供体制の整備

④相談支援等

⑤社会復帰の支援

⑥民間団体の活動に対する支援

⑦連携協力体制の整備

⑧人材の確保等

⑨調査研究の推進等

⑩実態調査(3年ごと)

それぞれ簡単に説明していきます。

①教育の振興等

国や地方公共団体が中心となり、国民に対し、ギャンブル依存症問題への関心と理解を深め、ギャンブル依存症の予防教育をすることが目的です。

具体的に学校、職場等でギャンブル依存症問題の教育や広報活動をするなど、知識の普及に必要な対策をすることが具体的な施策としてあげられます。

②ギャンブル等依存症の予防等に資する事業の実施

ギャンブル等関連事業の広告及び宣伝を事業主の自主性に任せながらも、ギャンブル依存症を防げるように配慮するといった対策をとります。

③医療提供体制の整備

国や地方公共団体は、ギャンブル依存症の方々が居住する地域に関わらず、良質な医療が受けられるような対策に着手していきます。

ギャンブル依存症を専門とした病院は現状少なく、地方に行けば行くほど少ないといわれています。

この医療格差を防ぐための対応も考えています。

④相談支援等

国や地方公共団体は、精神保健センター及び保健所においてギャンブル依存症に関する相談支援を充実させる施策に取り組みます。

具体的には、ギャンブル依存症当事者やその家族の支援を十分に行うため、相談員の研修の実施や情報提供を積極的に行います。

⑤社会復帰の支援

依存症当事者が円滑に社会復帰できるよう、就労の支援等を推進するために必要な施策を講じます。

ギャンブル依存症に関連した犯罪を犯したギャンブル依存症当事者を更生させていくための対策を始めていきます。

⑥民間団体の活動に対する支援

ギャンブル依存症だった方、そして現在ギャンブル依存症の方が依存症を克服し社会で生けるよう、民間団体にギャンブル依存症への対策ノウハウなどを提供していきます。

⑦連携協力体制の整備

医療機関、精神保健福祉センター、保健所、民間団体などと連携を取り、ギャンブル依存症当事者の支援や予防に役立てます。

⑧人材の確保等

国や地方公共団体が、ギャンブル依存症問題に関して十分な知識を持つ人材の確保や養成等を向上させる取り組みに着手します。

⑨調査研究の推進等

ギャンブル依存症問題に対する実態調査、ギャンブル等依存症の診断および治療などの研究や成果の普及を行います。

⑩実態調査(3年ごと)

ギャンブル依存症の発症した要因やほかの精神疾患の有無等の関連性を調査するため、2018年1月から2月にかけ「パチンコ・パチスロ遊戯障害全国調査」が行われました。

これらを継続的に調査することで、ギャンブル依存症の要因やその背景をより詳しく知ることや介入方法について検討することに役立てていきます。

4. 法案成立で私たちの生活はどのように変化するのか

私たちの生活が今回の法案を機に劇的に変わるわけではありません。

しかし、ギャンブル関連事業者に対する制限やギャンブル依存症当事者の方やそのご家族に対する支援は、行政や各事業所、民間団体レベルで広がっていくことが考えられます。

これまでの学習指導要領にはギャンブル等依存症についての記述はなく、直接的な指導はありませんでした。

今後は、高等学校で使用される学習指導要領にも取り上げられるよう準備が始まっています。

依存症ご本人やそのご家族の治療・支援に繋げるためのイベントや広告による普及活動も取り組み内容として想定されています。

これまで以上に、依存症における相談窓口が充実されていくことが期待されます。

5. まとめ

今回は成立されたギャンブル等依存症対策基本法案について解説していきました。

内容を改めて整理します。

  • ①社会問題化されているギャンブル等依存症への対応が法案設立の背景。
  • ②ギャンブル依存症対策には「パチンコ」も該当。
  • ③関連業務への規制や相談窓口の設置、啓発活動などが推進される。

新しく成立された法律は、その時々の社会状況を反映しています。

そしてその法律に目を通すことは、私たちの社会が今後どのように進んでいくのかを占う上で大変有益です。

法案内容の読み取りは一般の私たちからするとやはり難しいです。

もし今回の記事が皆さんのお役に立てていたのなら幸いです。

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参考:

・ギャンブル等依存症対策基本法案要綱  衆議院 

・ギャンブル依存症対策基本法案、ギャンブル等依存症対策基本法案に関する資料(平成30年5月) 衆議院調査局内閣調査室

ギャンブル依存症対策基本法案について「小西ひろゆき」公式ウェブサイト

ライター名: ブランコ先生