2018/09/07

治る? 治らない?|ギャンブル依存症の本当のところ

木のおもちゃハウス

ギャンブル依存症の方、もしくは依存症患者を持つご家族にとって最も気になるのが「依存症は治るのか、治らないのか」ということかと思います。

結論から言うと、どちらとも言えます。

あいまいな表現と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

それは依存症は完治できるものではなく、一生付き合っていくものだからです。

ただし、治らないとわけではありません。

ギャンブル依存症から回復することはできます。

詳細は後述しますが、ギャンブル依存症についての正しい理解が得られていないことが多々あります。

誤った知識により、途中で治療を投げ出してしまったり、もしくは、家族のそうした状況に気づかずに依存をより深刻にさせてしまっていることもありえます。

ご自身やご家族がギャンブル依存症から回復するためにも、この記事を通して「ギャンブル依存症とはどういったものなのか」しっかり理解していきましょう。

目次

1. ギャンブル依存症とはどんな状態を指すのか

ギャンブル依存症とは「社会生活に支障を来すにも関わらず継続的にギャンブルを繰り返してしまう状態」を指します。

組織や団体によって、「ギャンブル依存症」の説明は若干異なりますが、簡単に説明すると上記のようになります。

ギャンブル依存症の大きな特徴として、やめたくてもやめられないという点が挙げられます。

そのため、自分の意思でギャンブル行為をコントロールすることはほぼ不可能です。

また、ギャンブル依存症になると、次第に物事をギャンブル中心で考えるようになっていきます。

例えば、以下のような思考や行動をとるようになります。

・収入を得ると「ギャンブルで倍にできる」と考える

・家事や育児をよそにパチンコや競馬場などに足を運ぶ

・家族の生命保険を解約しお金を得る、金銭を盗む

参考:樋口進・松下幸生 国内のギャンブル等依存に関する疫学調査(2017)

2. ギャンブル依存症について勘違いされがちなこと

脳梗塞や心臓疾患、ガンなどのほかの病気とは異なり、ギャンブル依存症はまだまだ自分たちで対処できると思われている節があります。

「ギャンブル依存症は病気である」という認識が、まだ十分に世間で浸透していないからかもしれません。

ここでは、ギャンブル依存症で多い勘違いについて見ていきましょう。

誤解①ギャンブル依存症は完治できる

ギャンブル依存症はよく一度の入院や通院で完治できると思われがちですが、実際は違います。

「完治」というよりは「克服(回復)」といった方が適切です。

ギャンブル行為が継続されると、脳はその時の快楽を記憶として定着させます。

そして残念ながら、一度定着してしまうと、これを取り除くことはできません。

つまりギャンブル依存症の治療では、ギャンブルをしないための習慣づくりを生涯にわたって継続することが求められます。

誤解②やめられないのは心の甘え

ギャンブル依存症と聞くとどうしても「やめられないなんて、意思が弱い」など、精神的側面に原因があるように思われてしまう傾向があります。

しかし、誤解1でもお伝えしたように、脳に刻まれたギャンブルへの欲求を意思の問題で片付けることは難しいです。

ギャンブル依存症で苦しむ人の大半は、やめたくても自制できないのが実態だからです。

家族側からすれば納得いかない部分もあるかと思いますが、ぜひそのことをおさえておいて下さい。

誤解③ギャンブル依存症の治療に健康保険がきかない

ギャンブル依存症は、WHOでも認められている正式な病気です。

従って健康保険はもちろん、民間保険でも対象となっているケースは多くあります。

治療の際は、自分たちが条件を満たしているか予め確認してみて下さい。

もし保険に関して分からないことがあるならば、加入している機関に直接問い合わせてみて下さい。

誤解④自分次第でいつでもギャンブルをやめられる

前述したように、意思の問題で対応することが困難な病気の1つです。

また、ギャンブル依存症の本人が、自身が依存症であることを自覚していないこともあります。

依存症かどうか定かでない場合でも、その兆候が見受けられるならば、積極的に病院や自助グループの助けを求めて下さい。

速い段階での行動が克服・予防に繋がります。

3. 何がギャンブル依存症からの回復を困難にさせるのか

誤った知識がギャンブル依存症の回復を困難にさせていることがあります。

ギャンブル依存症は適切な処方次第で、十分克服できる疾患です。

もし克服できていないのならば、以下の原因が考えられます。

・依存者本人が自分の行動を否認しつづける

・自身の状況に危機感がない

・自助グループへの参加頻度が少ない、行かなくなる

こうしたものが全てではないにせよ、上記3点はいずれも依存症から抜け出せていない方に多くみられるケースです。

依存症者の中には自分が依存症であると認めたがらない場合があります。

治療プロセスではじめに重要になるのがこの認識を改めるところです。

もし身内であるあまり、なかなか厳しいことを言えない、あるいは逆に感情的に言い過ぎてしまう場合があるのなら、専門機関などにご相談ください。

はじめは自身の依存症を自覚したとしても、その後再びギャンブルに戻ってしまうことは少なくありません。

最初のうちは自助グループのプログラムに参加していても、時間が経つと、「もう自分は大丈夫だ」と思ってしまう方もいらっしゃいます。

依存症問題は、いかに自分の過去と見つめ合うことができるかが解決のカギとなります。

依存症者になると、どうしても事実と自身の認識にある種の壁を作ってしまいます。

本人が大丈夫だと言ったとしても、鵜吞みにしないことが重要です。

4. ギャンブル依存症を回復するために、家族ができること

ギャンブル依存症では、依存症者本人の自発的な行動が求められますが、それをサポートできるのは家族です。

専門的なことは自助グループに任せることが一番ですが、最後に家族側ができることをまとめておきたいと思います。

依存症に関する適切な情報収集を心掛ける

ギャンブル依存症の治療過程では、家族側の理解が必要です。

まずは、依存症を専門とする団体のHPやニュース記事など、情報を集める体制を作りましょう。

「依存症は本人の意思で解決困難」など基本を抑えておくだけでも、心理的な負担に違いが見られるかと思います。

家族が依存症から抜け出すためにも、また自分たちが必要に苦しまないためにも情報は集めて下さい。

よく分からない場合は、自助グループ等に直接電話してみるのも1つの手です。

援助はしない

家族側ができる最大の援助は何でしょうか。

それは、依存症者に対して、決して援助しないことです。

ギャンブル依存の治療ではまず、依存症者にしっかりと過去の責任を取ってもらうことが大事になります。

それはまた、本人の認知の歪みを取り除くことにもつながるからです。

問題を直面させることが治療を進める上での第一歩となるので、援助は絶対にしてはいけません。

5. まとめ

いかがだったでしょうか。

今回の要点は以下のようになります。

  • ①ギャンブル依存症は「完治」しないが「回復」は可能。
  • ②誤った知識や理解が回復を困難にさせていることがある。
  • ③ギャンブル依存症という病気を正しく理解することが回復の近道。

両立は難しいですが、それを実現するために治療機関は存在します。

もし、依存症に関してご相談等あれば、ぜひお近くの団体にお電話してみて下さい。

私たちヒューマンアルバでも無料相談を受け付けております。

心より、ご連絡お待ちしております。

今回の記事が皆さまの一助となれば幸いです。

お問い合わせはこちらから↓

社名: 株式会社ヒューマンアルバ

住所: 〒214-0038神奈川県川崎市多摩区生田6-4-7

TEL: 044-385-3000 (受付時間: 平日10:00-17:00)

----------------------------------------------------------------------

ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会を開催しております。

依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。

・つらい思いを吐き出す場として

・状況を変えていく学びの場として

ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)

----------------------------------------------------------------------

参考:

・帚木蓬生『ギャンブル依存とたたかう』(2004) 新潮選書

ライター名: ブランコ先生