薬物依存症の治療法|回復に向けたステップを解説
「薬物依存症の家族には、どんな治療がいいの?」
「薬物依存症治療ってそもそも何があるの?」
あなたはこんなお悩みをお抱えではありませんか?
薬物依存症は近年、一般の若年層にも広がりを見せる、誰にでもなりうる可能性のある病気です。
薬物依存は一般的に麻薬や覚せい剤といった違法薬物の使用が多く報じられます。
しかし実際は、市販薬や処方薬の乱用によっても陥る可能性があります。
この記事では、薬物依存症の治療方法や回復に向けたステップについてご説明しています。
薬物依存症は回復が可能な病気です。
今回の内容が皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
1. 薬物依存症とは
薬物依存症は、自分の意志では薬物の使用をコントロールできなくなってしまう精神障害です。
大麻やシンナー、覚せい剤、さらに市販薬や処方薬といった薬物の乱用を繰り返すと、薬物依存という「状態」に陥ります。
薬物依存状態とは WHOによると、薬物乱用の結果として生じた脳の慢性的な異常状態を指します。
その薬物の使用を止めようと思っても、渇望をコントロールできなくなった状態のことです。
こうなると日常生活に支障が出てもやめられない、また薬物を手に入れるためになりふりかまわなくなります。
また、身体的にも幻覚やけいれん等の異常症状が出ます。
これを「離脱症状」と言います。
逃れるためにまた薬物を使用する。これが依存症の進み方です。
2. 薬物依存症は治療できるのか
薬物依存症は治療可能なのでしょうか?
結論から言うと、薬物依存症の完全な治療方法はありません。
しかし、適切な指導を受け続け、薬物を使わない生活を繰り返せば、健康的な生活を送るまで回復させることは可能です。
一般的に、薬物への欲求が一度抑えきれなくなった脳は、半永久的に元の状態には戻らないとされています。
いくら薬物使用をやめても、「薬物のことを思い出す」といった些細なきっかけだけで薬物への欲求が戻ってきてしまうためです。
この欲求を完全に消すことはできず、だからこそ薬物依存症は完治できないと言われています。
日常生活に支障のない日々を送れるよう、回復へ向けた適切な治療を行って健康と信用を取り戻していくことが大事です。
3. 依存症治療までのステップ
薬物依存症は否認の病と言われ、基本的に対象者本人は治療を嫌がります。
そのため、治療には家族の協力が不可欠です。
まずは、治療に向けてどんなステップを歩んでいくべきかを学びましょう。ステップは次の3つに分かれます。
ステップ1)薬物依存症であることを理解する
まずは、これをお読みいただいている家族の方へ、疑いのある方が依存症かどうかを確認しましょう。
下記のチェックリストをご確認下さい。
・1〜4個該当の場合、依存症の初期段階
・5個以上該当の場合、薬物乱用・依存症段階
また、自身が薬物依存症か確認したい方は、下記のチェックリストをご確認下さい。
こちらはICD-10という国際的な物質依存症候群の診断基準です。
6項目のうち、3つ以上が過去1年間で繰り返し認められるとき「依存状態」と診断されます。
本人に依存状態であるかを自覚させるためにも、こちらもぜひ確認してみて下さい。
ステップ2)治療することを本人が決断する
ご家族、または本人が依存症であることを理解したら、本人が回復する意思を持ち、行動を決意するよう導いていきましょう。
依存症治療時において、家族だけが「治したい、どうにかしてほしい」と思っても本人が「大丈夫だ」と嫌がるケースは少なくありません。
しかし、治療を開始するには、本人による決断が必要不可欠です。
そのために、まずは本人ではなくご家族の方が周りの医者や家族会、回復施設等に相談に行き、本人が少しでも希望を持てるようにサポートしてあげることが大事です。
ステップ3)治療を開始する
依存症者本人が治療の決意を固めたら、本人の意向も含めて治療施設や治療方法を相談し、実施していきましょう。
具体的な治療方法は次章でご説明します。
この3ステップをみてわかる通り、依存症は治療の前に「本人が依存症であることを認め、治療意欲を持つ」ことが大切です。
依存症は生き辛さが原因となっているので、薬物を断たせることでは根本的解決とはなりません。
そのため、いざ治療に入る前のこの事前ステップが重要なのです。
4. 薬物依存の4つの治療方法
薬物依存症の治療には、主に下記の4つの手法が存在します。
それぞれの治療の内容と特徴をお伝えします。
①依存症教育
依存症とはそもそも何なのか、そして依存症によって引き起こされる問題について理解していき、依存症者本人への自覚を促す治療法です。
全ての方に必要な手法になります。
また、本人のみならず、家族の方も共に教育を受けることが大事です。
②個人精神療法
個別に行われるカウンセリングです。
精神科医や臨床心理士、ソーシャルワーカーなどと1対1で話し合い、個別のアドバイスを受けます。
医療機関によっては薬物依存症以外に合併している精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症など)の治療を同時並行して行えるのが特徴です。
③集団精神療法(自助グループ)
医師やソーシャルワーカーの指導のもと、依存症当事者たちが複数人で自分の問題について話し合い、回復について一緒に考えていく治療法です。
また、夜間に行われるところもあるため、働きながら依存症を回復したい方にも受けやすい手法です。
④入院治療
病院による徹底した環境管理プログラムです。
健康管理、個別相談、生活指導、金銭管理まで、絶対に薬物の手に入らない環境で寝食住が病院に管理されます。
症状が重篤な方や、精神/健康状態が特に不安定な方、定期的な通所すら難しいような方は入院による治療が必要かもしれません。
これらの手法はそれぞれ一長一短があります。
「これだけやっておけば大丈夫」というものではありません。
実際の援助場面では、医療機関によるプログラムと依存症経験者・関係者主導のプログラムをうまく組み合わせて治療を進める場合が多いです。
それが最も効果の出やすい方法だからです。
5. まとめ
- ①薬物依存症とは薬物使用を止められなくなり、社会生活に支障をきたす病気です。
- ②一度薬物依存になると完治はできませんが、治療により回復させることは可能です。
- ③治療方法には一長一短があり、状況に合わせて適切な手法を組み合わせていきます。
薬物依存症は心の病気です。
以前の生き方では無理があり、心の痛み・苦しみに耐えられなかったからこそ、本人は依存行動を繰り返し依存症に陥ってしまったのです。
ですから、依存対象を手放すためには「新しい生き方を身につける」事が回復のゴールとなります。
「ここまでいけばOK」という基準はなく、生涯向き合っていくのが「依存症からの回復」です。
自分と向き合う中で、少しずつ生きやすくなる。
楽に生きられるという実感を得ていくことから、回復が始まります。
私たちヒューマンアルバでは、依存症回復に向けた無料相談を行っています。
当事者やその家族として依存症を経験したスタッフが一人ひとりに寄り添いサポートしています。
・治療を受けさせたいけど、費用面に不安がある。
・怖い、誰か助けてほしい。
どんな小さなお悩みでも構いません。
あなたの意見を尊重しながら、ともに回復に向けて歩んでいきます。
お気軽にご相談ください。
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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会』を開催しております。
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・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)
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参考:
・松本俊彦先生に「薬物依存症」を訊く(2015.08.26)|日本精神神経学会
・渡辺登『依存症の全てがわかる本』(2007)講談社
・西村直行 他『薬物問題を持つ家族のための家族教室』(家族用テキスト)アジア太平洋地域アディクション研究所
ライター名: 宮口まりこ