2018/06/18

アルコール依存症の親の子どもは生きづらさを抱える

依存症当事者の皆さまへ 

 

依存症は本人だけでなく家族にもその影響を「強く・深く」及ぼすことはご存知ですか?

 

今回の記事はそのような事実を理解していただくために執筆しています。

 

依存症は当事者だけでなく家族も苦しむ病気です。

 

家族のうち誰かが依存症傾向にあると、家族全体に様々な不都合が出てしまいます。

 

家族の構成員は、依存症の家族の対応に疲れ、生きづらさを抱えます。

 

その後依存症の家族だった人自身も依存症になる可能性があるのです。

 

今回はなぜ依存症の親の子が依存症になるのか、そのメカニズムについてお伝えしていきます。

 

目次

 

1. アルコール依存症者の子は生きづらさを抱えて生きていく

なぜアルコール依存症等の依存症の親を持つ子どもは生きづらさを抱えているのでしょうか?

 

依存症の親や家族が毎日のように喧嘩をする家庭や、借金をし、その取り立てに追われることで居場所が確保できなくなる家庭があります。

 

過酷な家庭環境を生き延びるために、子どもたちは次第に「他人は信用できない。信じられるのは自分だけ」と猜疑心を強くする傾向が見られます。

 

そうした傾向は、大人になっても忘れられません。

 

それが人を簡単に信用できない「生きづらさ」へと繋がるのです。

 

2. 子どもの生きづらさとはどんなもの?

先ほど依存症の親をもつ子どもは、猜疑心が強く人が信じられない傾向になりうるとお話しました。

 

しかし、実際にはそれだけではありません。

 

親が依存症の場合、その影響は精神面にも及ぶとされています。

 

依存症の親の元で育ち、安心安全な家庭で育てなかったが故、子どもたちは心のどこかで、「むなしさやさみしさ」を感じやすいといいます。

 

具体的には以下のような精神的影響を及ぼします。

 

  • ・強い警戒心
  • ・自分の素直な感情を押し殺す
  • ・人に心を開くことができない
  • ・人との距離感がうまく掴めない
  • ・予期せぬ状況に柔軟に対応できない

 

さらに、近年の研究では依存症の親の元で育った子どもはそうでない子どもに比べ、不登校、家庭内暴力、非行などになるリスクが高いだろうといわれています。

 

依存症当事者にも生きづらさはあるのでしょうが、その家族も「生きづらさ」を感じています。

 

特に、周りの影響を受けやすい子どもほど、より一層その傾向は強くなります。

 

覚えていてほしいポイントは、「依存症当事者は本人だけでなく世代を超えて周囲の人間に影響を及ぼす」ということです。

 

また親のもとで育った子どもたちへの影響はその子どもの結婚にまで影響を及ぼします。

 

依存症の親の家庭で育った女の子は、もし父親が依存症の場合、同じように父親のような依存症者、もしくは「生きづらさを抱えた人」をパートナーとして選択する割合が高いといわれています。

 

3. 生きづらさの連鎖を食い止めるには?

ここまで、依存症の親の元で育った子どもは生きづらさを抱え、その子どももまた生きづらさを抱える可能性についてご紹介しました。

 

それでは、この連鎖を食い止めることはできないのでしょうか?

 

ここでは周囲ができる依存症の親の元にいる子どもにできる3つのことをお伝えします。

 

①依存症は病気であると伝える

・ギャンブル依存症で、中々家に帰ってこない。

 

・アルコール依存症で、常にお酒を飲んでいる。

 

もし依存症の親がそのような行動をしていたとしても、家族や子供が嫌いだからという理由だけで依存症になったわけでも、本人がわがままで依存症になったわけでもありません。

 

子どもは依存症の親を見て、「自分のせいで、ずっとお酒を飲んでいるのかもしれない」と自責するかもしれません。

 

そのため、周囲の人が「依存症の親は依存症という病気になっている」と伝えることが重要です。

 

親が依存症であると知ることで、親の依存行動を見ても、子どもが自分を自責したり、不用意にフラストレーションを抱えずにすむでしょう。

②子どもに罪はないことを伝える

依存症になってしまったのは自分のせいだと責める子どもも少なくありません。

 

また、依存症の親を世話する親側から「離婚したいけどあなたのためにも、両親が一緒の方がいいと思うから離婚できないの」などの言葉をかけられ子どもは傷つく可能性があります。

 

しかし、親が依存症になったこと、離婚できないこと、ともに子どものせいではありません。

 

周囲の人は依存症の親の元で育つ子どもに明確に「あなたは悪くない」と伝えてください。

③子どものSOSを見逃さない

依存症の親の元で育つ子どもは、過酷な環境にいることで、うつ病やパニック障害等の精神疾患を発症したり、引きこもりや不登校ことがあります。

 

言葉にならないこれらのSOSを見逃さず、彼らの心の傷や悲しみに寄り添ってください。

 

彼らが「安全な環境」の中で、つらい気持ち、悲しい気持ちを吐き出せるよう、カウンセラー等の第三者に繋いでください。

 

子どもたちの苦しみをそのままにせず、少しでも軽くなるよう働きかけることが大切です。

 

4. まとめ

  • ①依存症の親の子どもは過酷な環境を生き延びるため、「生きづらさ」を抱えることがあります。

  • ②依存症の親の子どもは、生きづらさを抱えることで、心理的影響だけでなく、パートナーの選択にも影響を受けます。

  • ③子どもたちが、生きづらさを抱えずにすむように、周囲は「依存症は病気である」「親の依存症は子どものせいでないと伝える」「苦しんでいるときに寄り添う」などの行動が必要です。

 

アルコール依存症は心の病気です。

 

私たちヒューマンアルバでは、依存症回復に向けた様々な治療プログラムを提供しています。

 

当事者やその家族として依存症を経験したスタッフが、一人ひとりに寄り添い対応しています。

 

どんな小さなお悩みでも構いません。

 

あなたの意見を尊重しながら、ともに回復に向けて歩んでいきます。

 

お気軽にご相談ください。

 

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社名: 株式会社ヒューマンアルバ

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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会を開催しております。

 

依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。

 

・つらい思いを吐き出す場として

 

・状況を変えていく学びの場として

 

ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)

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参考:

・榎本稔『よくわかる依存症』(2016)主婦の友社

・斎藤学『アルコール依存症に関する12章』(1986)有斐閣新書

鈴木明由実 アダルト・チルドレンが語る「回復」への ナラティヴ・アプローチ 東洋大学

原英樹(2011)家族システムの歪みによって引き起こされる問題性について

井村文音,松下姫歌(2011)サブシステムに着目した家族機能と アダルトチルドレン傾向との関連について 広島大学大学院 臨床教育研究センター紀要 第10巻

Repeat~りぴぃーと~-アルコール依存症からの回復- 兵庫県精神保健福祉センター

 

ライター名: 木原彩