回復のステップ
回復までの流れ
- 「病気である」ことを認識
ここからは、回復までのステップをより具体的に見ていきます。
まずは、自分が「依存症」という病を抱えていることを認めることから始めます。
自分をそのように認識することはとてもつらいことではありますが、
少しでも生きやすい人生を手に入れるための第一関門です。 - 治療する決断
自分が病気であることに気づいたら、「回復する」という意思決定をするのが、次のステップになります。
自分の人生を投げやりに考えるのではなく、少しでも希望をもてるよう、医師・ご家族や友人、
我々民間の支援員からの働きかけていきます。ご本人が回復に意欲をもって取り組むための動機づけをしていきます。 - 治療スタート
本人が治療決断をしたら、本格的に治療が始まります。
一般的には、以下のような手法が有ります。
◦ a:依存症教育
▪ 依存症とはそもそも何なのか、そして引き起こされる問題について理解していきます。
◦ b:個人精神療法
▪ 個別に行われるカウンセリングです。精神科医や臨床心理士、ソーシャルワーカーなどと話し合い、個別のアドバイスを受けます
◦ c:集団精神療法
▪ 医師やソーシャルワーカーの指導のもと、依存症当事者複数人で自分の問題について話し合い、回復について一緒に考えていきます。
▪ 自助グループという、各地で定期的に開かれている会合に参加するのも一つの手段です。
それぞれ一長一短があり、「これだけやっておけば大丈夫」というものではありません。
自分にとってどれが効果的か考え、実施していきます。
回復の定義
本当の回復とは、「単に表面上の行為をやめること」ではありません。
依存症当事者や、回復支援に関わる人たちの間では、「やめるのは簡単だが、やめ続けるのが難しい」と言われます。
一旦やめることができても、また元のパターンに戻ってしまう「再発」が非常に多いのです。
理由は、依存対象物を使うことで、「自分の生き辛さ」を一時的に解消することができ、
それがあるからなんとか生き延びられているという状況があるからです。
場合によっては、「それによって死なずに済んできた」と考えられます。
依存を深めてしまった背景には、その人が今までの人生の中で何らかの苦しみ・困難と向き合い闘ってきたことがあります。そして、そのことに対して本人が気づいてないケースも多いです。
こうした苦しみに目を向けずに表面的にその依存対象を取り上げても、根本的な解決にはなりません。
そのような表面的な対応では問題は解決せず、本人はかえって苦しくなり、また依存行動を再開してしまいます。
大切なのは「やめるかやめないか」ではなく、「報酬(依存行動)」を必要としている
心の苦しみ・痛みに向き合い、どうすればそれを軽減することができるか考え、行動していくことです。
では、一体どうすれば回復するのか?
回復の例
様々な意見がありますが、当事者の方々が仰る意見として以下の様なものが有ります。
• 自分の抱えている生きづらさの正体に気づくこと
• 完璧ではない自分を許し、受け入れること
• すべて自分の責任だと思わなくていい、ということに気づくこと
• 人に「助けて」といえるようになること
• 率直な意見をぶつけあえる仲間をみつけること
これらは一例であり、様々な「回復」の意見があります。
大事なことは、依存症の回復とは「自分の生き方」そのものと向き合うことです。
「自分の弱さと向き合い、時には周囲の人と助け合いながら生きること」
「不健全なとらわれから自分を開放すること」といえます。
これは、自分の考え方や行動のパターン、価値観を見直したりすること。
生きている中でのストレスへの新しい対処スキルを身につけることを意味します。
以前の生き方では無理があり、心の痛み・苦しみに耐えられなかったからこそ、依存行動を続けるしかなかった。
であれば、依存対象を手放すために「新しい生き方を身につける」事が必要となります。
言葉にすると簡単ですが、実践していくのは長く険しい道程です、
今までの自分と葛藤し、長い時間を費やして自分と向き合っていきます。
「ここまでいけばOK」という基準はなく、生涯向き合っていくのが「依存症からの回復」です。
自分と向き合う中で、少しずつ生きやすくなる。楽に生きられるという実感を得ていくことから、回復が始まります。