依存症克服を阻む誘惑|どうしたらやめられる?
「やめなきゃと思っても誘惑に負けてしまいます。」
「もうギャンブルしないって言ったのに...。」
依存症は、一度なってしまうと自分の意思でなんとかすることは困難な病気です。
たとえ本人がやめたいと思っていても、誘惑をきっかけに再飲酒・再使用してしまう場合があります。
この記事では、依存症と誘惑、そして誘惑を回避するワークをご紹介します。
目次
1. 依存症と誘惑|代表的な事例
当事者が強い意思を持っていても、家族が献身的にサポートしていても、ふとした拍子に再飲酒・再使用してしまうケースは珍しくありません。
「どんな時に再使用・再飲酒の誘惑が起こるのか」
私たちの施設へ相談に来られた方々の情報をもとに、まとめてみました。
参考にしてみてください。
①当時の仲間たち、かつて通っていたスポットに行ってしまう
・以前の飲み仲間、パチンコや競馬仲間に再会する
・かつて通っていたパチンコ店を偶然通りかかる
そうした際に我慢することは非常に大変です。
依存症者にとって、並大抵のことではありません。
②過小評価してしまう
「久しぶりのお酒くらい、問題ないだろう。」
こう思ってしまうパターンは非常に多いです。
しかし、最初の一杯がきっかけで、自分の中のスイッチが入り、渇望現象(「もっと飲みたい」という強迫観念)が起こり、どうにも止められなくなります。
以前より、ひどい状態になることも考えられます。
③不安・焦燥感
「しっかりしなきゃ」「やり直すんだ」と決意しても、思い通りに行かないことは少なくありません。
自分なりに必死に努力しているのに、誰もみてくれない・評価してくれない。
真面目にやっているのに「またお酒飲んでない?」「仕事遅いよね。またお酒飲んでるのかも。」と疑われてしまうこともあるでしょう。
腹が立ったり「なんで自分はこうなんだ」と失望してしまうこともあるかもしれません。
そんなつらい日々の中で「飲まなきゃやってられない」等と自分を正当化し、アルコール摂取してしまうかもしれません。
これらの誘惑によって、依存症に戻ってしまうことがあります。
アルコールや薬物等に関連する「強く・深い刺激」「誘惑となりうるもの」を『引き金』といいます。
2. 再飲酒・再使用を防ぐワーク|誘惑の対処法
思わぬ誘惑によって、「飲んでしまった」「使ってしまった」等のケースがあります。
引き金を避けようとしても、すべての引き金を排除して生活を送ることは不可能です。
ここでは避けられない引き金に対しての対処法についていくつかご紹介します。
①思考ストップ法
引き金に遭遇し、「飲みたい、でもやめなきゃ」と思いながらも、欲求はどんどんふくらみ、強い渇望となる可能性が高いです。
そのため、欲求が膨らむ前に考えをやめる「思考ストップ」することで、欲求がこれ以上増加することを防ぎます。
例えばですが、
・「飲みたい」気持ちに駆られたら、顔を洗う。
・「薬を使いたい」を「寝逃げ」で回避する。
・「やりたい」時に、大切な人を思い出す。
などの「渇望」を止められるような自分のやり方をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
私は辛い時や焦燥感に駆られる時「大切な人の写真」を見返します。
「今はつらくても、いつか彼に会えるから」
「今の自分を見せても恥ずかしいだけだ。もっと頑張って胸張れるようにならないと。」
このように、写真を見て気持ちを落ちつけることがあります。
他にも以下のような「思考ストップ法」があると、臨床現場では言われています。
スイッチ・オフ
何らかの誘惑によって、「飲みたい」、「やりたい」となった時、スイッチやレバーの映像を思い出します。そして一気に「オン」から「オフ」に切り替えます。
輪ゴムパッチン
手首に輪ゴムをあらかじめ巻いておきます。そして「使いたい」「やりたい」という気持ちが湧いてくる旅に輪ゴムをはじいて「やめ」「ストップ」と声に出すことで「使いたい」気持ちをやり過ごします。
リラクゼーション
「つかいたい」衝動に駆られたら、深呼吸を繰り返し行います。息を吸うときは鼻から、はくときは口からはきます。はく時間を通常より時間をかけ、ゆっくり息をはいていくことでリラックス効果があるそうです。
②誘惑に流されないよう「錨」を使う
錨とは「船が潮や波に流されないように、海中におろすおもり」のことを言います。
依存症の文脈では、アルコール依存症や薬物依存症の欲求に流されないように「とどめてくれる人・場所・状況」を指す言葉です。
「この人の前では、怖くてお酒が飲めないな」
「この状況では薬は使えないな」
このような感情を持つ場合、錨となる人や場所、状況を頼って、誘惑に負けそうになった時
・「この人の前では飲めないな」の人に連絡する。
・「この状況では使えないな」と思う場所に行く。
などの対処法が考えられます。
誘惑に負けそうになっても、同じように依存症回復を願う方との出会いが、誘惑への錨となる可能性があります。
あるいは、自分を心配してくれる支援者の方との出会いが誘惑への錨となるかもしれません。
今回ご紹介した対処法も、考えるだけでなく実際の場面を想定して練習しておくと、誘惑に負けそうになった時にスムーズにこれらの対処法が使えると思います。
3. まとめ
お付き合いいただき、ありがとうございました。
今回は、依存症克服を阻む「誘惑」やその対処法についてご紹介しました。
最後にここまでの内容を整理します。
-
①依存症は、脳にまで影響を与える精神疾患です。強い意志があっても小さな誘惑をきっかけに再飲酒・再利用のリスクがあります。
-
②対処法として、「思考ストップ法」「この人の前では使えないという状況の整備」「錨をおろす」方法があります。
-
③対処法は、実際に練習しておくと、その場面になった際に実行しやすくなります。
私たちヒューマンアルバでは、依存症当事者の方に向け様々な治療プログラムを提供しています。
単なる回復支援にとどまらず、当事者や家族のこれまでの苦しみに寄り添い、支援していきます。
弊社では依存症に関する無料相談を行っています。
お電話だけでなく、メールでのご相談も可能です。
お困りの際は、ぜひ一度ご連絡下さい。
お問い合わせはこちらから↓
社名: 株式会社ヒューマンアルバ
住所: 〒214-0038神奈川県川崎市多摩区生田6-4-7
電話: 044-385-3000 (受付時間: 平日10:00-17:00)
----------------------------------------------------------------------
ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会』を開催しております。
依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。
・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)
----------------------------------------------------------------------
参考:
・松本俊彦,今村扶美『SMARPP-24 物質使用障害治療プログラム』(2015) 金剛出版
・高野歩(2016)渇望に襲われたらどうすればいいの?|引き金と対処、スケジュール|臨床心理学 増刊第8号 やさしいみんなのアディクション
・薬物依存離脱指導 刑事施設における特別改善指導|厚生労働省
・藤野京子 編著皆なでできる、私一人でもできる 薬物からの離脱ワークブック(仮称)|CANPAN
ライター名: 木原彩