アルコール依存症者が再飲酒|家族ができる対応方法
「アルコール依存症の旦那が、せっかく禁酒をしていたのに、また飲酒を初めてしまいました...。どうしたらいいのでしょうか?」
アルコール依存症は「依存症を克服した」と思えても、再飲酒等で十分再発する可能性がある精神疾患です。
アルコール依存症者の再飲酒は、単なる「わがまま」や「甘え」によるものではありません。
アルコール依存症を経験した人なら、だれしも起こりうる症状の1つです。
この記事では、「アルコール依存症当事者の再飲酒」について、そして「再飲酒してしまった当事者に対して家族や周囲の人たちができる対応方法」についてご紹介していきます。
目次
1. アルコール依存症と再飲酒について
はじめにアルコール依存症と再飲酒についてお伝えします。
アルコール依存症は、簡単に言えば「アルコール摂取をし続けた結果、自分の意志でアルコール摂取をコントロールできない病気」のことを指します。
アルコール依存症の場合、お酒が切れると「吐き気」「手の震え」「けいれん発作」等の離脱症状が現れます。
離脱症状は、アルコールを摂取すると一時的に収まります。そのため、本人たちはそうした症状から逃れるようと、飲酒を再開している場合があります。
アルコール依存症の治療中や断酒をしている時でも「お酒を飲みたい」という気持ちがあふれ、再飲酒に至るケースもあり、依存症からの回復は一筋縄ではいかないのが実情です。
「お酒はもうこれで最後にするから」
と本人たちが言っていたのにも関わらず、再飲酒してしまうことがあります。
それは彼らの「わがまま」や「甘え」によるものではなく、病気から生じているものなのです。
ただし病気だとしても、再飲酒してしまうのにはいくつかの要因があると考えられています。
以下、弊社に相談に来る方々のお話を参考にご紹介していきます。
①アルコール依存症の理解不足
「ちょっとくらいなら飲んでも大丈夫だろう」といった認識不足などから、これまで絶っていたお酒を再開してしまうケースです。
②「気持ちの落ち込み」や「ストレス」
それまでアルコールを飲むことでごまかしていた「気持ちの落ち込み」や「ストレス」があるかもしれません。
そうした自身の状態をうまく処理できず、再飲酒してしまう場合があります。
③生活の破綻
アルコール依存症になることで、「お酒を飲むこと」にとらわれてしまい会社をクビになり、生活費を稼ぐことができなくなるケースです。
そうした体験が原因となり、当事者を不安にさせ、再飲酒に至らせてしまう場合があります。
④喪失体験
順調に断酒できていたものの、大切な人の喪失などがあったケースです。もしくは、昇進や定年退職など今ある役割の喪失などのケースなどです。
これらの喪失体験を乗り越えられず、精神的に苦しい状況になった時、再飲酒が起こりやすいと言われています。
⑤家族内での人間トラブル・悩み
断酒を始めた後も、家族内での問題によるストレスや気持ちの落ち込みから、憂さ晴らしのために飲酒してしまうケースです。
具体的な問題としては、配偶者の病気、夫婦不和、それらによる子どもの問題行動などです。
2. アルコール依存症者への適切な対応
アルコール依存症者が再飲酒してしまった際、周囲はどのような対応をすれば良いのでしょうか?
①依存症当事者に良い意味で過度な期待をしない
「旦那はお酒をやめる決意したんだから、少し落ち着いたら仕事復帰してもらわないと...。」
「息子はお酒をやめるって言ってるわ。そろそろ休んでいる大学にも復学してほしいわ。」
アルコールをやめる決意をしたことで、依存症当事者の家族は当事者に対して過度な期待をしてしまう場合もあります。
しかし、アルコール依存症当事者にとって飲酒をやめることは、とてもストレスのかかるものです。
そのため、アルコールをやめることでイライラしたり、不安になるなど気持ちの面でも不安定になることがあります。
また、アルコール依存症当事者に対して、アルコールをやめること以外に何かを期待するような事は当事者を苦しめてしまう可能性があります。
期待をプレッシャーに感じてしまう当事者は特にそうだと思います。
過度な期待をせず、アルコール依存症当事者がアルコールをやめることを温かく見守ることが依存症からの回復において大切です。
とはいえ、当事者の家族側もかなりのストレスを抱えていると思います。
その際は、一人で抱え込まず第三者を頼り、家族だけで苦しみを抱え続けないでください。
②アイメッセージを使ったコミュニケーションをし、依存症当事者に温かい言葉をかける
アルコール依存症当事者にとって、アルコールをやめることが過度なストレスになる場合があります。
また、しらふの状態になると家族や友人にしてしまったことを思い出し、自己嫌悪に陥る場合があります。
依存症当事者はそうした気持ちを忘れるために飲酒してしまうこともあるでしょう。
自己嫌悪に陥っていたり傷ついているアルコール依存症者には温かい言葉をかけてあげてください。
アルコールをやめられていることを褒めたり、アイメッセージで気持ちを伝えてあげてください。
家族の温かな励ましが依存症当事者にとって「心の支え」になり得るのです。
③依存症当事者の家族であるが元気でいる
当事者の家族側も元気でいることが大切です。
依存症者の家族は自己嫌悪や罪悪感に陥りやすいと聞きます。
例えば、彼らの「会社を休む」「学校に行けない」などの行動に対し、「依存症であるあの人のせいで社会に迷惑が掛かっている」と罪悪感を抱いてしまう可能性があります。
「依存症の当事者も本当に苦しそうで。会社もアルコール依存症になっていけなくなって首にされて。彼にはもう生きがいもないのかもしれません...。」
このように、依存症当事者の様子から何もできない自分に罪悪感を持つ方もいるでしょう。
しかし、依存症当事者が孤独でないのは、家族であるあなたが彼らのそばにいるからだと思います。
彼らが依存症を克服する際に心の支えとなるのは、あなた方家族の存在かもしれません。
依存症当事者のためにも、依存症当事者の家族も元気でいてください。
あなたが元気でいることが、なにより彼らのサポートに繋がります。
④一人で悩まず第三者を頼る
依存症当事者もそのご家族も一人で悩まず第三者を頼ってください。
依存症を抱える当事者や家族は周囲の目を気にしたり、遠慮をし、第三者に助けを求められない場合があります。
また、「自分が悪いから」と自分を責め、周囲に援助を求めることができないケースもあります。
依存症当事者の否認から、「もう打つ手が残されていない」と今の状況に絶望し、何もできないこともあるでしょう。
しかし、どうか第三者を頼ってください。
これは「依存症当事者の家族の経験」をした私の「心からのお願い」です。
実際に相談できる機関として、保健所や精神保健福祉センター、依存症専門病院などです。
(ヒューマンアルバでも無料相談を行っています。お気軽にご連絡ください。)
依存症当事者のためにも、依存症当事者の家族のためにも、どうか周囲に助けを求めてください。
3. まとめ
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
少しでもアルコール依存症について、そして再飲酒についてご理解が深まったのなら幸いです。
最後にこの記事の内容をまとめます。
- ①アルコール依存症は、自分の意志で飲酒をコントロールできない病気です。
- ②アルコール依存症になると再飲酒になるリスクがあります。
- ③家族にできることは、「当事者に過度な期待をしない」「アイメッセージを送る」「自分自身が元気でいる」「周囲に助けを求める」の4つです。
私たちヒューマンアルバでは、依存症から回復するための回復プログラムを提供しています。
単なる依存症治療にとどまらず、依存症になる前から当事者たちが抱える「苦しみ」や「不安感」に寄り添い支援していきます。
ご相談に費用はかかりませんので、せひ一度ご連絡ください。
電話はもちろん、メールでの対応も受け付けております。
自分たちだけで苦しまず、ぜひ私たちのような存在を活用してみて下さい。
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参考:
・小杉好弘(2011) 『アルコール依存症がよくわかる本-正しい理解と回復のための68ケース』中央法規出版
・猪野亜朗(1992)『アルコール依存症家族読本<断酒の動機づけ>から<家族の再構築>まで』アスク・ヒューマンケア
・新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン に基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き 第1版(2018) 一般社団法人 日本アルコール・アディクション医学会 日本アルコール関連問題学会
ライター名: 木原彩