薬物依存症とSMARPP|「安心できる場所」への架け橋
「薬物依存症の治療でSMARPPって有効って聞いたけど、どんな治療法なの?」
「SMAAPPって聞いたことあるけど、どんな効果があるの?」
あなたはこうお思いかもしれません。
「SMARPP(スマープ)」とは、薬物依存症の方やアルコール依存症の方のためのプログラムです。
近年は保険医療機関や依存症回復施設等のリハビリ施設にとどまらず、司法関係施設でも活用され始めています。
SMARPPには、参加者の断薬や薬物使用状況の改善だけでなく、自助グループ等の支援機関の利用率を高めるなどの結果が研究等から報告されています。
この記事では、SMARPPとはどんなプログラムか、そしてどのような効果があるかについてご紹介していきます。
目次
1. SMARPPと実際のプログラム内容
SMARPPとは薬物やアルコール依存症の方のための回復プログラムです。
SMARPPとは正式に「せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム」と呼ばれます。
これは、Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Programの頭文字をとっているためです。
※せりがやとは病院の名前をとっています。プログラム作成者が勤めていた「神奈川県立精神医療センターせりがや病院」の名前にちなんでいます。
それでは、実際にどんなプログラムが行われているのでしょうか?
今回は、SMARPP治療の際によく使用される、「SMARPP-24」についてご説明します。
プログラムは週に1回、約90分かけて行われます。1クールは24回のセッションとなっています。
グループ方式で行われ、複数のクール(つまり同じプログラムを2回受けるなど)も可能です。
プログラムの内容として
①「渇望や再使用への気持ちの高ぶり」が起こりやすい状況の理解
②渇望の際に必要な対処スキルの習得
を含め、実際に渇望をどう対処するか、どう周囲に援助を求めるかなどが検討されます。
毎回のセッションの中では、薬物やアルコールの使用状況や渇望状態等をシェアしてきます。
飲酒等の告白をする依存症当事者の方もいらっしゃいます。
その際には、臨床心理士や精神科医師などのファシリテートの元、「正直に話してくれたことをねぎらいつつ、告白した依存症当事者の健康面等を気遣う発言」をします。
そして「使いたい・飲みたい」という気持ちとどう折り合いをつけていくのか、話し合い等を通して、一緒に検討していきます。
最後に「みんないろんな状況の中、来てくれてありがとうございます」と言いつつ、その場をまとめます。
SMARPPプログラムでは、依存症当事者に対しても「変化したい気持ち」にフォーカスし、彼ら1人ひとりの気持ちに寄り添います。
依存症当事者の中には、無断キャンセル等でプログラムを離脱しそうな方もいます。
そういった方々に対しても、あらかじめ電話番号を聞いておき、事前許可を頂いた上で「あなたに今日会えなくて寂しかったよ。次回も待っています!」等の連絡をしていきます。
その他にも当事者の状況に合わせてメール等をし、翌週当事者が参加するなどのケースも報告されています。
SMARPPのプログラムの中で、依存症当事者にとって「安全な場」にすることも特徴の1つです。
安全な場にするという意味では尿検査なども行いますが、これは治療の目的に使ているのであって、通報等司法的な対応のために使わないと公言しています。
一方で、SMARPPプログラム内で、薬物を入手する機会になったり、渇望を刺激するものにならないためのルールも提示しています。
具体的には、「病院の薬物を持ち込まない」、「薬物使用時の生々しい使用状況を詳細に話さない」などのルールをひき、そうすることで渇望を刺激せず、安心して治療できる環境を整えています。
2. まとめ
今回は近年薬物依存症等の治療で使われるプログラムの1つであるSMARPPについてご紹介しました。
最後に内容を整理します。
- ①SMARPPとは、薬物やアルコール依存症の方のための回復プログラムです。
- ②SMARPPは、当事者の「依存症を克服したい」という気持ちに寄り添いながら行われます。
- ③SMARPPでは「薬物依存行動の渇望を引き起こさない」「安心安全に助けを求められる」など、当事者にとって安全な空間づくりを心掛けていきます。
私たちヒューマンアルバでも、日々のプログラムを通して依存症当事者の方々の社会参加を支援しています。
あたたかな雰囲気の中プログラムを提供しつつ、1人ひとりの「今まで」と「これから」に寄り添っています。
少しでも何かご相談等ありましたら、ぜひご連絡ください。
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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会』を開催しております。
依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。
・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)
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参考:
・松本俊彦『よくわかるSMARPP―あなたにもできる薬物依存者支援』(2016)金剛出版
・小林 桜児(2010) 統合的外来薬物依存治療プログラム-Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program (SMARPP) の試み- 精神神經學雜誌 112(9), 877-884, 2010-09-25
・松本俊彦『臨床心理学増刊第8号―やさしいみんなのアディクション』(2016)金剛出版
・谷渕由布子, 松本俊彦, 今村扶美, 若林朝子, 川地拓, 引土絵未, 高野歩, 米澤雅子, 加藤隆, 山田美紗子, 和知彩, 網干舞, 和田清(2016) 薬物使用障害患者に対するSMARPPの効果:終了 1年後の転帰に影響する要因の検討. 日本アルコール・薬物医学会雑誌. 51(1), 38-54.
ライター名: 木原彩