ゲーム依存症の中学生への対処法|当事者の家族からお悩みの家族へ
「中学生の息子がゲームばかりやっています。やめさせたいのですが、どうすればいいでしょうか?」
「中学生の娘がオンラインゲームにはまり、不登校になりました。私は娘にどんなサポートができるのでしょうか?」
あなたはこうお悩みかもしれません。
中学生でゲーム依存症になる子の中には、「不登校」「学力低下」「睡眠障害」のケースなどが報告されています。
この記事では、ゲーム依存症もしくはその疑いのある中学生やそのご家族に向けてお話していきます。
目次
2. 【体験談】ゲーム依存症になった中学生の男の子|出会いと変化
1. ゲーム依存症の定義
まずゲーム依存症というものについて整理しておきましょう。
ゲーム依存症は、「ゲームをやり続けた結果、不登校になったり、仕事に行けなかったり、重篤な問題を引き起こす障害」のことです。
2018年6月、世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害(ゲーム依存症)」を疾病認定し、うつ病等の精神障害の1つとして認められるようになりました。
「昨日息子は『ゲームはもうやらない、明日からちゃんとするから』と約束しているのに、一度も約束を守ってくれないんです。」
「ゲームを取り上げると、『ゲームを返せ』と怒り出し、壁を殴って穴をあけたり、イライラが抑えられないようなんです。」
このような言動の背景にゲーム依存症という病気が隠れているかもしれません。
ゲーム障害(依存症)の診断は、以下の4つの症状を1つの目安に診断が行われます。
①ゲームのコントロールができない
②他の生活上の関心ごとや日常生活よりゲームを選ぶほどゲームを優先する
③問題が起きているがゲームを続けてしまう、またはより多くゲームをする
重症度
④ゲーム行動のためにひどく悩んでいる。または個人の家族の社会における学業上または職業上の機能が十分に果たせない
しかし、この診断基準はあくまで目安です。
重症度が高い場合、症状が12か月続かない場合でも「ゲーム障害」と認定される可能性があります。
ここまでで「うちの子はゲーム依存症かもしれない」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
お悩みの場合は一人で抱え込まず、第三者にご相談ください。
ヒューマンアルバでも無料相談を行っております。お気軽にご連絡ください。
2. 【体験談】ゲーム依存症になった中学生の男の子|出会いと変化
ここからは私が以前であったゲーム依存症の男の子の事例についてお話していきたいと思います。
彼とは私が大学生の際に「メンタルフレンド」といって不登校の子どもたちの訪問支援を行っていた時に出会いました。
※メンタルフレンドとは、ひきこもり・不登校等児童に対し、大学生等を児童の家庭等に定期的に訪問し、遊びや対話を通して、児童の成長を助ける。彼らにとって「年の離れたお兄さん・お姉さん」として彼らに寄り添う存在です。
出会った当初の彼は「自分は誰にも理解してもらえない」と、中学校で周囲とのすれ違いがあった体験を話してくれました。
彼と初めて会った時、家族以外の人と久しぶりに会ったからか、学校等で彼が体験した「人間関係の中での傷つき経験」が関係していたのか、ほとんど話すことはなく、こちらの様子をうかがいながらゲームをしていました。
彼がその時にやっていたゲームをたまたま私が知っていたこともあり、ゲームについて2,3個質問をしつつ、彼のやっているゲームを見ていました。
そして、「彼は今何を考えているんだろう?」「どんな気持ちなんだろう?」と思いながら接していました。
2ヵ月経った時には、ゲームをしている彼の横に私も座り、お話をする関係になっていました。
数ヶ月一緒にいたことで警戒心が解けてきたのか、ゲーム以外にも「おやつを2人で食べる」「ゲームの攻略法について話す」などのコミュニケーションも行われるようになってきました。
そして出会ってから4ヵ月経った時に、ゲームの攻略法について一緒に考えていた時に、ふと「ゲームに勝つために数学の確率を勉強しよう!」という話になりました。
そこで、私は彼とゲームを使った確率の勉強をするようになったのです。
「ゲームに勝つためにも、頭を使う必要があり、思考力を鍛える1つの手段として勉強をしておくことも『あなたにとって』よいかもしれない」
そうした関係性を構築していく中で、ゲーム以外にも面白いものがあるかもしれないという話を伝えていきました。
数学の他にもゲームという題材を使いながら、歴史や国語の勉強を始めていきました。
すると、彼の方もゲーム以外の「好きなこと」を話してくれるようになりました。
彼は、もともと中学校を不登校になる前は歴史や小説を読むことが好きな子でした。
結果的に、ゲーム以外にも歴史や小説の感想などを話せるようになりました。
現在も彼はゲームを完全にやめられてはいませんが、以前のようにゲームだけでなく、それ以外の関心分野にも挑戦し続けています。
3. ゲーム依存症の中学生にできるサポート
いかがだったでしょうか?
学校での「人間関係での気持ちの上でのすれ違い」から不登校になり、そうした苦しみから逃れるためにゲーム依存症になってしまった彼ですが、徐々にゲーム以外のこともできるようになりました。
ゲーム依存症になってしまった子たちにできるサポートには、どのようなものがあるのでしょうか?
ゲームすることを否定し過ぎない
ゲーム依存症になると健康面での心配が出てきたり、ゲーム依存症で生じる「不登校」や「学力低下」などの問題から、どうしても「いかにゲームをやめさせるか」という考え方をしがちです。
しかし、ゲーム依存症になる子の中には、「ゲーム依存症になる前から、なんらかの『生きづらさ』を抱えている」ケースがあります。
中学生であれば、思春期ということもあり過度に人に気を使いすぎている可能性があります。
また、小学校から中学校に移行することで、「内申点」などを気にする必要があり、学校でもなかなか気が抜けない日々が続くのかもしれません。
気を使い過ぎることで気持ちが疲弊する可能性があります。
その心の疲れなどから1次的に逃れるためにゲーム依存症になるケースがあります。
単にゲームをやめさせようとすることはかえって彼らを追い詰めてしまうかもしれません。
どうか、ゲームをすることを否定せずにそっと彼らのそばにいて、彼らの気持ちに寄り添ってあげて下さい。
彼らが興味を持っていることに関心を持ち、一緒に楽しむ
皆さんの中には、ゲームにのめりこむ中学生の彼らに対して、「このままじゃ高校に行けないわよ」と言った経験はないでしょうか?
あるいは、いつまでも寝ずにゲームをしていることに対し「早く寝なさい」と部屋の電気を消してみたり、ゲームを取り上げた経験はないでしょうか?
そうした行為は、一時的なゲーム抑止にはなるかもしれませんが、多くの場合、抜本的な解決には繋がりません。
それよりも、「彼らは何に興味があるんだろう?」「どんな話をしたら、彼らは楽しいかな?」と考える方が良いかもしれません。
私が関わった子は、たまたまゲームに勝つために数学の確率をしてみたいと話してくれました。
それがきっかけで、楽しみながら彼と「確率」を勉強することができるようになりました。
また、彼が興味があった歴史の話をすることで、少しずつゲーム以外の時間も増えました。
ゲーム依存症の子が中学生の場合、彼らは「ゲーム以外に楽しいことはない」と思い込んでいる可能性があります。
ゲーム以外にも面白い世界があることを周囲の方々から、一緒に楽しみながら伝えていくことが重要なのかもしれません。
ただし、それを家族だけでゲーム依存症当事者のために尽くすのは現実的ではありません。
私が関わった男の子の家族のように、第三者に介入してもらうことで、ゲーム依存症の症状が緩和したり、ゲーム以外の何かに挑戦するきっかけが生まれるでしょう。
家族だけで抱え込まず、第三者を頼る
最後に、ゲーム依存症の家族はひとりで抱え込まず第三者に頼ることが大切です。
ゲーム依存症の当事者は、「家族だから…」という甘えから皆さんの言葉に聞く耳を持たない可能性があります。
また、ゲーム依存症の家族は当事者との関わりの中で精神的にも肉体的にも疲れてしまう可能性もあります。
一人で抱え込まずぜひ第三者を頼ってください。
4. まとめ
①ゲーム依存症(障害)は2018年に疾病認定された病気です。
②ゲーム依存症は不登校や学力低下などの二次的な問題につながる場合があります。
③ゲーム依存症当事者の家族は、当事者に対して「ゲームを否定しない」「ゲーム依存症当事者に対して興味を持つ」「適切に第三者を頼る」などの援助が考えられます。
ヒューマンアルバでは依存症当事者だけでなくその家族の力になりたいと願っています。
どんな些細なことでも構いません。お気軽にご連絡ください。
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参考:
・学生・市民セミナー『ネット依存、スマホ依存とその取組み』2018年9月8日(土)|第40回日本アルコール関連問題学会
・「ゲーム依存の実態と課題」(視点・論点)2018.02.06|NHK解説委員会
ライター名: 木原彩
※紹介した事例は、記事の趣旨を損なわない範囲で、個人の特定ができないように一部事実を変更しています。また、本人やご家族の同意を得た上で記載しています。