2019/01/27

アルコール依存症と精神療法|「苦しさ」を緩和する3つの方法

カウンセリング

「アルコール依存症の治療に精神療法を使うって聞いたけど効果あるのかしら?」

「精神療法って具体的にどんなことをするの?」

あなたはこのようにお思いかもしれません。

2013年に日本で行われた疫学調査によれば、アルコール依存症を発症している人は107万人いるだろうと報告されています。

アルコール依存症はもはや珍しい病気ではないのです。

アルコール依存症の治療には、薬物療法、入院療法等がありますが、その他にも心理療法や精神療法があり、高い効果が臨床現場等から報告されています。

依存症を発症する人の中には、発症前から「苦しみ」や「寂しさ」、「孤独感」を抱え苦しんでいる人もいるでしょう。

そのため、依存症になる前から「生きづらさ」を抱えている可能性があります。

この記事では、アルコール依存症とその治療で行われている精神療法についてご紹介します。

目次

1. アルコール依存症とは

アルコール依存症は、WHOによって以下のように定義されています。

「飲酒等のアルコールの摂取によって得られる精神的、肉体的な薬理作用に強く囚われ、自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神障害」

簡潔に説明すると「アルコールの飲酒等、アルコールの摂取を自分の意志でコントロールできない病気」です。

アルコール依存症は本人の「なまけ」や「わがまま」によってもたらされるものではなく、れっきとした精神障害の1つです。

アルコール依存症になると、脳の前頭葉を中心に萎縮などの影響を与えます。

また、アルコール依存症は当事者の人格さえ変えてしまう場合があるのです。

例えば、「すごくまじめで几帳面」だったひとが「だらしなくてで怠けもの」にみられたり、「温厚で優しい人」が「気が短くキレやすく」なります。

アルコール依存症が原因で性格が変わったと気づかない周囲の人たちは、正しい対応をせずに当事者を孤立させてしまう可能性があります。

「この人はわがままになった」「なんて自分勝手なんだろう...」と感じ、周囲から孤立していく可能性があるのです。

2. アルコール依存症と精神療法|苦しみを癒す3つの方法

アルコール依存症には精神療法薬物療法入院療法などいくつか治療法があります。

これらの治療法を組み合わせることで、断酒を継続できる精神状態になりうるのです。

ここではアルコール依存症の治療法の1つである精神療法についてご紹介します。

精神療法はアルコール依存症の治療だけでなく、その人が元来持っていた「苦しみ」や「生きづらさ」の治療にも効果があると言われています。

ここでは代表的な3つの方法についてご紹介します。

①個人精神療法

アルコール依存症当事者は、依存症の症状やもともともの「生きづらさ」から、周囲に対して心を閉ざしてしまったり、攻撃的になる場合があります。

また、アルコール依存症になったことで社会生活において「会社にいけない」「人に暴力をふるってしまった」など大変なこと、困ったことに巻き込まれている場合があります。

そのため、現在当事者が困っていることに対して、カウンセラーや精神科医が話を聞き、困りごとを一緒に整理したり、わだかまりを解きほぐします。

また、過去から今まで抱えていた苦しみにも耳を傾け、寄り添うことで傷つきを癒していきます。

このように、依存症当事者の過去から現在に至るまでの困りごとに耳を傾けたり、傷を癒していく精神療法を個人精神療法と呼びます。

ここでは、実際に話を聞くだけではなく、精神分析療法や箱庭療法、認知行動療法など様々な心理療法が使われる場合があります。

②集団精神療法(自助グループ)

集団精神療法とは、治療者と治療される方など複数人で対人交流を図りながら行う精神療法のことを言います。

集団の中で精神療法を行うことで対人関係での失敗や過去の対人関係で生じた傷つき経験を集団の中で癒していくことができるといわれています。

集団精神療法は自助グループなどで活用される治療法です。

自助グループとは、依存症など同じような苦しみを抱えた者同士が、お互い話をし、話を聞き、お互いを支えあうことで問題の解決や克服を図るグループのことを言います。

自助グループに通うことで、自分のように依存症で悩み苦しんでいる人の存在を知り、「悩んでいるのは自分一人ではない」と安心できるといわれます。

自分自身が依存症による苦しみや悲しみを語ることで、誰かが共感してくれたり、誰かの支えとなるかもしれません。

その過程で、「自分は人に受け入れてもらえる」「役に立てる」という経験をし、自分に対する嫌悪感が減っていきます。

そして、実際に仲間が回復していく姿を見ることで、「自分も依存症を克服できるかもしれない」と希望を持つことができるかもしれません。

依存症の人たちは、こうした集団での関わり合いを通して少しずつアルコールから離れていきます。

③内観療法

内観療法とは、治療者が1週間朝から夜まで「自分を見つめること」だけに集中する心理療法の1つです。

依存症当事者は臨床心理士等のセラピストと以下のことを見つめなおします。

まずは母親など、治療者にとって重要な人に対して「今まで自分にしてもらったこと」「今までその人に対してして返したこと」「迷惑をかけたこと」の3テーマについて思い出します。

繰り返し過去の体験を思い出すことで「自分は依存症になることで今まで周りに迷惑をかけていたのかもしれない」と気づきを得ることがあります。

また「自分は過去苦しくて、それでアルコールを摂取し続けたのかもしれない」と感じ、自分がしてきたことに気が付くかもしれません。

過去に誰かにしてもらったことを思い出すことで、他者に対する感謝や思いやりが生まれる可能性があります。

治療者は内観療法の際に、「過去の出来事」を言葉に出して振り返りますが、その際に非難されたり、評価されたりせずにセラピストと話すことができます。

自分が話しづらい話を誰かに聞いてもらえること自体が癒しになることもあるので有効な1つの治療法です。

自分がしてしまったことの気づきによる罪悪感や、誰かがしてくれたことに対する感謝や愛情によって、「もうお酒はやめないと」と断酒するときの心の支えになることがあります。

実際にアルコール依存症になっていた当事者が内観療法の中で「自分の怒りの感情を抑えるためにアルコールを摂取し、感情を麻痺させていたのかもしれない」と気づいたそうです。

自分は今まで依存症になったことで周りに迷惑をかけてしまったこと、そして、それでも家族に大切にされていたことに気が付き、「もっと人に優しくできる人になりたい」と話しています。

内観療法を行うことで自分の感情に気が付いたり、周囲が自分をどのようにとらえ、関わってくれているのか気が付くのかもしれません。

3. まとめ

いかがだったでしょうか?

これまでの内容をまとめます。

①アルコール依存症は「アルコール摂取を自分の意志でコントロールできない病気」です。

②治療では、個人精神療法、集団精神療法、内観療法などの精神療法が行われています。

③上記の治療によって、以前から抱えていた「生きづらさ」を癒せるかもしれません。

これまでアルコール依存症と精神療法についてご説明していきました。

しかし、私たちはアルコール以外にもゲーム依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症等でお悩みの当事者や家族の力になりたいと願っています。

ご相談は無料で受け付けております。

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参考:

・竹元隆洋(2000)アルコール依存症の精神療法

杠岳文,武藤岳夫,遠藤光一,吉森智香子(2017)特集 DSM-5 時代のアルコール依存の診断と治療のゴール-断酒か飲酒量低減か-アルコール使用障害の治療目標

ライター名: 木原彩