機能不全家族で育ったら依存症に?|依存症と家庭機能の関連性
アダルトチルドレンという言葉をご存知でしょうか?
アダルトチルドレンとは、アメリカのアルコール依存症の治療現場から生まれた言葉です。
「アルコール依存症の親の元で育った大人(Adult Children of Alcoholics )」という意味があります。
最近では、アルコール依存症だけでなく、様々な機能不全家族のもとで育った子どもたちもアダルトチルドレンと呼ばれています。
彼らは家庭内で様々な傷つき方をし、後遺症を抱えている可能性があります。
あなたは自分がアダルトチルドレンかもしれないと悩んでいたりしませんか?
もしくは自分の家庭が機能不全家族ではないのかと悩んでいませんか?
この記事では機能不全家族の特徴や依存症との関連性、治療方法ついてお伝えしていきます。
目次
1. 機能不全家族とは?
機能不全家族とは、家族が本来持つべき機能が働いていない家族のことをいいます。
近年、家族形態の多様化に伴い家族に関する様々な問題が指摘され始めています。
例えば、児童虐待や家庭内暴力など、家庭内の問題が社会問題として注目を集めています。
家族は本来、精神的なよりどころとしての機能を担うとされ、本来は子どもたちにとって「安心安全」が保障された場所であるはずです。
しかし、核家族や都市化に伴う人間関係の希薄化などから、家族の一人一人にとって家庭は安らぎの場ではない場合があります。
こうした様々な誘因が機能不全家族となりうる可能性を高めています。
近年の研究では、機能不全家族にはいくつかの家族内ルールがあるといわれています。
①硬直のルール
アルコール依存症当事者などが「暴れる」、「泥酔する」などの問題行動に備えて、その問題行動を家庭内で受け止めようとしている場合があります。
家庭には「暖かな安らぎの空間」はなく、これらの問題行動に備え、常に家庭の空気感が固く硬直している可能性があります。
②沈黙のルール
アルコール依存症当事者の家族は、家の中で起きている出来事※を恥ずかしいと感じることがあります。
※例えば、アルコール依存症の方がアルコールの離脱症状などからアルコールを求め、暴れるなどの出来事です。
外ではもちろん、家庭内でもそのことを話題にしないという暗黙のルールがある場合があります。
沈黙のルールのせいで、家族がアルコール依存症当事者に対し、積極的に治療を勧めるなどのきっかけが作れない場合があります。
③否認のルール
家庭内に依存症などを抱える人がいる場合、機能不全家族ではその問題を一切認めないなどの否認のルールが家庭内で決められている可能性があります。
例:「うちには依存症になっている人なんていません」という態度をとる
自分たちの家庭には何の問題もない、普通の家族であると装うことで、根本的な問題がそのままになる可能性があります。
④孤立のルール
アルコール依存症当事者がいる、もしくは家庭内で問題が起きていることを家族以外に知られないよう、問題を抱える家族が他者との親密な交流を阻もうとする行動が見られます。
他者と交流しないことで、機能不全家族は孤立化し、家庭内で起きている問題が依然と残るケースも見られます。
「自分の家庭が機能不全家族なのか?」と思われる方のためにチェックリストを用意しました。
以下は、セラピストの西尾和美氏によって作成された「機能不全家族尺度」と呼ばれるものです。
機能不全家族の特徴をリスト化したものです。
1. 親にアルコールなどの依存が見られる家庭
2. よく怒りが爆発する家庭
3. 冷たい愛のない家庭
4. 性的・身体的・精神的な虐待のある家庭
5. 他人や兄弟姉妹といつも比べられる家庭
6. あれこれ批判される家庭
7. 期待が大きすぎて期待に沿えない家庭
8. お金・仕事・いい学校だけが重視される家庭
9. 他人の目を気にする表面だけよい家庭
10. 親が病気がち・留守がちな家庭
11. 親と子の関係が反対になっている家庭
12. 両親の中が悪い・けんかのたえない家庭
13. 嫁姑の中が悪い家庭
複数当てはまり、自分自身に「生きづらさ」を抱えている場合、あなた自身が機能不全家族で育った可能性があります。
後述する機能不全家族で育った方が回復する方法を読んで、一人で抱え込まずどうか第三者を頼ってください。
2. 機能不全家族と取り巻く家族への影響
これまで機能不全家族についてお話してきました。
ここからは機能不全家族で育った子どもたちを含む構成員には様々な影響があるというお話をしていきます。
特に子どもたちは家族が落ち着くようにと、子どもなりに役割を担うことがあります。
以下、機能不全家族で育った子供が演じる役割を一部ご紹介します。
①ドゥアー(The Do-er)
この役割を果たす人は、家族の仕事や役割を一気に引き受ける傾向にあります。
食事や炊事や家族のこまごまとした雑務を引き受けます。
時々空虚感や疲労感に襲われます。
②イネイブラー(The Enabler)
自分自身の犠牲や努力によって家族のために尽くす役割です。
家庭内の争いの仲裁をしたり、発生している問題が外に出ないよう常に配慮した行動をとります。
③ロストチャイルド(The Lost Child)
一人で遊ぶ、部屋に閉じこもるなどの行動をします。
自分自身の存在を消そうとすることで、機能不全家族の家庭の調和をとろうと働きかけます。
④英雄(The Hero)
不断の努力により、社会や学校などで成功、活躍し、不幸な状況になる家庭に名誉やほこりを与える責任をもつ役割です。
⑤マスコット(The Mascot)
自分自身のつらさや孤独、悲しみなどの感情を抑え常におどけた行動で家族を陽気にさせようとする道化師的な役割を担います。
⑥いけにえの羊|スケープゴート(The Scapegoat)
非行や犯罪、アルコール依存症など社会的に問題のある行動を起こして、家族の厄介者となる行動をする役割です。
ほかの家族から「あいつがいなければいいのに」と非難される役割を担うことで、機能不全家族の家族の問題を一気に引き受ける役割です。
⑦聖者(The Saint)
家庭内の暗黙のルールに応えて、聖者のように常に清く正しく精神的に価値の高い崇高な行動をする役割です。
⑧プリンセス(Dad’d little Princes)
子どもらしい感情や意思の表現を抑圧し、親に合わせた行動をとり続ける役割です。
成長してから他者から暴力や虐待を受けるリスクも高いのです。
これらの役割は家族の中で雰囲気が変わると異なる役割へと変わっていく可能性があります。
そして、これらの役割を演じることで子どもたちが子ども時代に自分らしく生きられず、大きくなっても生きづらさを抱える可能性があります。
具体的には、自己主張をせず他人に必死に合わせようとするなどの行動や、ありのままの自分を認められず常に他人の承認を求めるなどの行動がみられる場合があります。
孤独感を感じやすかったり、自尊心が低い場合もあります。
これらの生きづらさから一時的に回避するために何かに依存してしまうケースも臨床現場では多く報告されています。
3. 機能不全家族から回復するには?
ここまで機能不全家族と機能不全家族で育った子どもたちの性質について、ご説明していきました。
次に、機能不全家族で育った子どもたちがどうしたら「生きづらさ」がなくなるのかについてお話していきます。
①カウンセリング
機能不全家族の中で育った子どもたちは、幼少期に子どもらしく生きられなかったことで傷つき、悲しみを抱えている可能性があります。
そうした経験を誰かに語ることで癒しになる場合もあるでしょう。
誰かに語ることで今まで心の奥底にあった怒りや悲しみを外に出すことができ、自分とその苦しみの距離を置くことができるかもしれません。
また、安心して話を聞いてくれる人の存在のおかげで自分は一人じゃないと実感し、安心することができるでしょう。
②箱庭療法
箱庭療法とは砂の入った木箱にミニチュアなどを置いて表現を行う心理療法です。
対象者は、カウンセラーなどのセラピストとの関係性の中で安心して自己表現することで、少しずつ癒されていきます。
カウンセラーに守られた空間で、徐々に癒され自己治癒力が働くといわれています。
③自助グループ
自助グループは、「同じような辛さを抱えた者同士が、お互いに支え合い、励まし合いながら、問題の解決や克服を図る」ことを目的に活動を行うグループです。
自助グループに参加することで、普段友人や同僚には話せない、「機能不全家族で育った自分が感じたこと、苦しかったこと」などを話せます。
また、話したことを同じような仲間に聞いてもらえることで「自分は受け入れてもらえた」と癒されるでしょう。
同じような経験をした人との出会いを通して「苦しいのは自分一人じゃない」と安心し、孤独感やむなしさが緩和されることもあるかもしれません。
自分のような経験をし、乗り越えた当事者との出会いで、「自分もこれから生きていたらいいことがあるかもしれない」と将来に希望をもつことができるかもしれません。
機能不全家族で育った子どもであるアダルトチルドレンが通う自助グループの活動もあります。
ご関心があれば、以下の参考からご覧ください。
4. まとめ
- ①機能不全家族とは「家族が本来持つべき機能が働いていない家族」のことを言います。
- ②機能不全家族の構成員は様々な役割を持ち、それによって生きづらさを感じる場合があります。
- ③機能不全家族で育った子どもは、カウンセリングや箱庭療法等の心理療法、自助グループに通うことで傷つき経験を癒せるでしょう。
私たちヒューマンアルバでは、依存症当事者はもちろん、そのご家族や周囲者の苦しみにも寄り添います。
自分は依存症でなくても機能不全家族で育ち、生きづらさを抱えているなど苦しみを抱えているのなら、私たちは力になりたいと願っています。
少しでも悩みや問題、気になる点などあれば、ぜひご連絡ください。
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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会』を開催しております。
依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。
・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)
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参考:
・笹野友寿・塚原貴子 大学生の精神保健に関する研究機能不全家族 とアダルト ・チルドレン(1998)川崎医療福祉学会誌
・鈴木明由実 アダルト・チルドレンが語る「回復」へのナラティヴ・アプローチ(2010)東洋大学
・千葉有希子,小林厚子 家族機能とアダルト・チルドレン的傾向に関する実証的研究(2003)東京成徳大学臨床心理学研究 3号
・原英樹 家族システムの歪みによって 引き起こされる問題性について(2011)神奈川大学心理・教育研究論集
ライター名: 木原彩