ゲーム依存症の治療法|苦しみ続けた当事者への5つの癒し
「息子がゲーム依存症で苦しそうです...。治療法はないのでしょうか?」
「娘がゲーム依存症で...。どんな治療法があるのですか?」
ゲーム依存症は本人の意思でゲームがやめられない精神疾患の1つです。
2018年にICD11で「ゲーム障害(ゲーム依存症)」が正式に認定されました。
ゲーム依存症は治療すれば克服できる可能性のある病気です。
現在ゲーム依存症の治療法や原因について研究が広がりはじめ、いくつか効果的な治療法が報告されています。
この記事ではゲーム依存症の治療法や家族が当事者にできることをお伝えします。
目次
1. ゲーム依存症とは?|診断基準と定義
2018年6月、世界保健機関(WHO)はゲーム依存症を「ゲーム障害(ゲーム依存症)」と疾病認定しました。
「勉強や家の手伝いもせずにゲームばかりしている」行動の裏には依存症という病気が隠れているかもしれません。
ゲーム依存症は、ゲームをやり続けることで、不登校や欠勤などの様々な問題を引き起こす障害です。
ゲーム障害(依存症)の診断は、以下の4つの症状が12か月継続している場合に診断されます。
臨床的特徴
①ゲームのコントロールができない
②他の生活上の関心ごとや日常生活よりゲームを選ぶほどゲームを優先する
③問題が起きているがゲームを続けてしまう、またはより多くゲームをする
重症度
④ゲーム行動のためにひどく悩んでいる。または個人の家族の社会における学業上または職業上の機能が十分に果たせない
この診断基準はあくまで目安です。
重症度が高い場合、症状が12か月続かない場合でも「ゲーム障害」と認定される可能性があります。
2. ゲーム依存症の治療法
ゲーム依存症の治療法には現在、大きく分けて5つあると考えられています。
以下、それぞれの治療法についてご説明します。
①薬物療法
現時点ではゲーム依存症の特効薬はありません。
そのため薬物の投与は直接的にゲーム依存症に効果があるわけではないかもしれません。
しかし、ゲーム依存症に他の精神障害、例えばうつ病や不安障害などを併発している場合、発達障がいなど元々の特性がある場合は、薬物療法によって依存行動が緩和される場合があります。
薬物療法の効果は限定的なので、他の心理療法との組み合わせが一般的です。
②認知行動療法
認知行動療法とは、物事の見方や考え方の偏りを修正し、客観的に自分の状況をとらえられるようにする精神療法の1つです。
うつ病や不安障害、不眠症、統合失調症などの精神疾患に効果があるといわれています。
また、認知行動療法で脳が変わったという研究報告もあり、治療法として今後さらに注目されていくことが予想されます。
オランダの脳科学者のフロリス・デ・ランゲによれば、慢性疲労症候群の患者に認知行動療法をしたところ、委縮した脳の容積が回復したと報告されています。
ゲーム依存症の認知行動療法では一般的に、以下のようなステップで治療が進みます。
1. それぞれの当事者の背景や性格などを理解し、悩みや問題点だけでなく、本人の長所や強みも見つけたうえで治療計画を立てます。
2. 本人が自覚している問題を改善するために生活のリズムを整えることを考えます。
→「ネットやゲーム以外に楽しみがない」という悩みや問題がある場合、ゲーム時間を一緒に確認したり、ゲーム以外に本人が楽しいと思えそうな活動を提案するなどが行われます。
3. 当事者の囚われている思考に焦点をあてて、認知の偏りを修正していきます。
③カウンセリング
ゲーム依存症当事者の中には、ゲーム依存症になる前から「孤独感」や「むなしさ」を抱えているケースがあります。
そのためゲーム依存症になる前から生きづらさや苦しみを抱えているかもしれません。
ゲーム依存症の治療と合わせて、これらの苦しみを癒していく必要があります。
カウンセラーや精神科医のもとで、カウンセリングを行い、過去の傷を癒していくことでゲーム依存症になる前から抱えていた生きづらさが緩和されることでしょう。
④集団精神療法(自助グループ)
自助グループは、依存症や摂食障害など、同じような体験をもつ人同士が互いに励ましあい、苦しみの克服を目指す集団です。
依存症治療の中では効果のあるといわれている治療法の1つです。
自助グループでは定期的に、「ミーティング」とよばれるグループワークが行われます。
ここでは、依存症当事者が自分の依存症体験を話したり、自分の苦しみを話していきます。
依存症当事者は別の参加者の体験を自分と重ね合わせ、「自分は一人ではない」と実感するでしょう。
また、自分の苦しみを吐き出すことで、話すだけで「気持ちが軽くなった」と感じることでしょう。
自助グループに通い続けることで、メンバーとの信頼関係が徐々に醸成されます。
こうした経験から、「自分は他人に受け入れてもらえる」という安心感が得られます。
⑤コミュニケーションを高めるような活動
子どもがゲーム依存の場合、コミュニケーションを取りながらゲーム以外にも楽しみがあると伝えることも大事でしょう。
この治療法は、子どもたちに「ゲーム以外にも楽しいことがあるんだよ」と気づいてもらうことが狙いです。
久里浜医療センターでは、デイケアの中で、カレーなどご飯を作る活動があります。
食べ物の買い出しから、依存症当事者やスタッフで行い、みんなで力を合わせてカレーを作ります。
一緒に会話をしながら何かをする経験を通して、ゲーム以外にも自分は楽しいと思える経験ができると知ることができます。
久里浜医療センターでは、ゲーム依存症治療の1つとして、2014年から文部科学省と国立青少年教育振興機構と協力し、8月にキャンプを行なっています。
ゲームやネットから離れ、自然の中で同じような当事者と過ごすことで、ゲーム以外の楽しみに気が付いたり、生活のリズムなどが整ってくる等の報告がされています。
3. ゲーム依存症当事者に家族ができること
最後にゲーム依存症当事者に家族ができることをお伝えします。
①ゲーム依存症について勉強してください
ゲーム依存症に関して、正しい知識を身につけてください。
ゲーム依存症はまだまだ情報が多いわけではありません。
しかし知識を正しく身につけることで家族や依存症当事者が今どういう状況なのかわかり、今後の治療の見通しが立ちます。
②家族会等に参加し、ゲーム依存症当事者の家族も孤立しないでください。
当事者家族は、「自分は彼らの力になれていないのではないか」と自信を失い、疲れ、困惑しているかもしれません。
私もゲーム依存症当事者の家族だった経験があるので、これらの感情で苦しんでいたことを昨日のことのように思い出します。
しかし、依存症当事者の家族は、依存症当事者のためにも元気でいることが大切です。
そのために自分の健康を大事にして下さい。
健康でいるための1つの手段として家族会に参加することも有効です。
家族会では、友達や同僚などに気月に話しづらいゲーム依存症のことを家族が吐き出せます。
他の当事者家族との出会いを通じ、「自分は一人ではない」と実感できます。
ゲーム依存症を緩和した当事者の家族の話などが聞ければ、「自分の家族も克服できるかもしれない」と希望を持つこともできるでしょう。
③家族も元気でいてください。
先ほどもお伝えしたように、依存症当事者の家族が元気でいてください。
「私が元気でいていいのだろうか?」と罪悪感をお持ちになるかもしれませんが、家族が元気でいることはとても重要です。
心身が疲れていると、問題を上手く解決することが困難になるからです。
まずはあなたが、「○○したい」と思う自分の心の声に耳を傾けてください。
私がゲーム依存症当事者の家族だった時は、好きな音楽を聴くことが癒しになっていました。
自分が心地よいと思える時間を意識して作ってください。
4. まとめ
- ①ゲーム依存症は2018年にWHOで精神疾患と認定されました。
- ②ゲーム依存症の治療は認知行動療法など5つあり、これらは組み合わせて治療が行われています。
- ③当事者の家族は「正しい知識を手に入れること」「家族会に参加してみること「自分達が元気でいること」が大切です。
私たちヒューマンアルバでは、依存症当事者はもちろん、ご家族のサポートも行っています。
少しでもお悩みなどあれば、ぜひご連絡ください。
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依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。
・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
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参考:
・樋口進『ネット依存症から子どもを救う本』(2014) 法研
・岩崎正人『子供をゲーム依存症から救う精神科医の治療法』(2013) データ・ハウス
・友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』(2017) NHK出版
・「青少年教育施設を活用したネット依存対策研究事業」報告書(2014) 国立青少年教育振興機構
ライター名: 木原彩