アルコール依存症の3つの原因|依存症は誰にも起こりうる
「夫がアルコール依存症かもしれなくて。いったいなぜ依存症になったんでしょう?」
「アルコール依存症に息子がなってしまって。私の育て方が悪かったのでしょうか?」
2013年に行われた日本の疫学調査では、約107万人がアルコール依存症者だと推定しています。
しかし、アルコール依存症の診断を受け治療を受けている当事者は、わずか4万人と言われています。
アルコール依存症の疑いがあるにも関わらず、当事者一人で、もしくはご家族だけで抱え込んでいる可能性が高いという現状です。
アルコール依存症の唯一の原因は分かっておらず、様々な要因が関係して生じるといわれています。
そうした要因の中には「仕事でのストレス」や「遺伝的な要素」などが含まれています。
あなたの身近に、アルコール依存症の方はいらっしゃいますか?
この記事ではアルコール依存症の原因について、体験談を交えながらお伝えしていきます。
目次
1. アルコール依存症とは?|定義とチェックリスト
アルコール依存症とは、「アルコール摂取のコントロールができなくなること」を言います。
あくまで精神疾患で、その原因は本人の怠けや甘えではありません。
アルコール依存症は、臨床場面で使用されるICD-10(WHO の定めた診断基準)で以下のように定義されています。
「薬物依存症の一種で、飲酒などアルコールの摂取によって得られる精神的、肉体的な薬理作用に強く囚われ、自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神障害である。」
また、アルコール依存症の診断基準について、ICD-10では以下のように記載し、臨床現場でも使用されています。
【ICD-10によるアルコール依存症】
過去1年間のある期間に、次の項目のうち3つ以上がともに存在した場合、依存症の疑いがあります。
① アルコールを摂取したいという強い欲望が抑えられない。終業前になると決まって飲みに行くことを考える。家には常に酒を用意している。進行すると、帰宅まで待ちきれずに車中で飲んだり、隠れてあるいは出勤しないで飲むようになる。
②アルコールの使用量をコントロールできない。飲み始めると際限がなくなり、あるだけ飲んでしまう。
③飲酒を中止もしくは減量すると離脱状態と呼ばれる現象があらわれる。つまり、飲まないとイライラして落ちつかない、発汗する、脈が速くなる、寝られない、手が震えるなどの症状があらわれる。進行すると、全身の大きな震え、幻覚、妄想などもあらわれる。
④かつてと同じ量では酔えなくなり、酒量が極端に増えた。
⑤飲酒以外のことに関心が向かない。家族で過ごす時間や会話が減る。外出しても飲酒が優先事項になる。休日には朝から飲酒する。
⑥明らかに有害な結果が起きている。たとえば、飲酒に原因する病気(肝臓病、高血圧、糖尿病、心臓病)、うつ状態などの悪化、家庭内でのトラブル、飲酒によって周囲の信頼を失うことなどがある。それにもかかわらず、どうしても飲酒を止められない。
項目をチェックし、「私(家族)はアルコール依存症かも?」と思われた方は、一人で悩まず病院や回復施設などにご相談ください。
ヒューマンアルバでも無料相談を実施しております。
2. アルコール依存症の原因3つ
先ほどもお伝えした通り、アルコール依存症の唯一の原因というものは特定できません。
いくつもの問題が複合的に絡み合い、依存症になった可能性があります。
しかし、アルコール依存症を発症しうる要因は近年の研究でいくつか明らかにされ始めています。
ここでは代表的な3つの要因をお伝えします。
遺伝的要因
「親・祖父母の代にアルコール依存症、またはそう疑われる人がいる」という場合、アルコール依存症になりやすい遺伝的素質があるとされています。
ある家系調査を行った研究によると、男性には共通の遺伝子があるとも言われています。
アルコール依存症や肝臓におけるアルコール代謝について、危険因子となる遺伝子も見つけられつつあるという研究もあります。
環境的要因
環境的要因について説明します。
アルコール依存症は飲酒習慣のある人なら発症しうる病気です。
そして、アルコール依存症の人の周りの環境が「アルコールを摂取しやすい」場合、アルコール依存症になる可能性があります。
例えば以下の様なものが要因として考えられます。
・幼少期親が多量飲酒をする習慣がある
・友人・同僚・上司から飲酒を勧められる
・周囲者のアルコール摂取への肯定的な態度
心理的要因
心理的要因として、何らかの「生きづらさ」「苦しみ」「孤独感」からアルコール依存症になるケースがあるといわれています。
例えば、アルコール依存の原因の1つとして、「心的外傷を含む大きなストレス」が懸念されます。
近年では、震災や災害後に大きなストレス等を抱えた人が、環境の変化に適応できず、喪失感に苦しむことから、アルコール依存症になるケースがあるとも報告されています。
弊社の施設を利用されている方や、アルコール依存症者とのかかわりの中では、以下の心理的側面を持つ人が多いように感じます。
・自己肯定感が低い
・社会生活を送るうえで「生きづらさ」を抱えている
・孤独感や虚しさがある
・不安感が強く、傷ついた経験をもち、その傷を癒せていない
・Noを言えない優しい人、過度に気を使ってしまう
これらの心理的側面から「生きづらさ」を抱え、その苦しみから逃れるためにアルコールを摂取している場合があります。
3. まとめ
①アルコール依存症は「アルコール摂取をコントロールできなくなる」精神疾患です。
②当事者の甘えや怠けを原因として解決するのは簡単ではありません。
③アルコール依存症はいくつかの要因が重なった結果、生じるとされています。
アルコール依存症は、多くの人が一人でもしくは家族だけで抱え込んでしまう病気です。
依存症は適切に第三者を頼れば回復する可能性があります。
一人で抱え込まず、依存症専門病棟、依存症回復施設などを頼ってください。
私たち、ヒューマンアルバでは依存症回復に向けた無料相談を行っています。
当事者やその家族経験があるスタッフが、一人ひとりに寄り添った対応を行なっています。
・アルコール依存症の旦那への対応がわかりません。
・つらいです、苦しいです。
あなたの意見も尊重しながら、ともに回復へと歩んでいきます。
お気軽にご相談ください。
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参考:
・杠岳文, 武藤岳夫, 遠藤光一, 吉森智香子 アルコール使用障害の治療目標(2017)精神神経学雑誌 119: 245-251
・4. Cadoret, R.J., Winokur, G., Langbehn, D., et al (1996)Depression spectrum disease, I: The role of gene environment interaction. Am J Psychiatry 153: 892899,. The American Journal of Psychiatry
・竹下達也 飲酒行動を決定する遺伝要因とその健康影響 (1999)日本衛生学雑誌
・Chao Y-C, Young T-H, Tang H-S, Hsu C-T.(1997) Alcoholism and alcoholic organ damage and genetic polymorphisms of alcohol metabolizing enzymes in Chinese patients. Hepatology 25: 112-7. AASLD
・黒木俊秀 災害ストレスと心のケア (2005)慶應義塾大学出版会
ライター名: 木原彩