アルコール依存症って治るの?|治療と家族にできること
アルコール依存症と診断されているご家族をお持ちの皆さん。
あるいは、アルコール依存症の疑いがあるご家族をお持ちの皆さん。
アルコール依存症は治らないものだと諦めていませんか?
そんなことはありません。依存症からの社会復帰は十分に可能です。
近年、ARPや抗酒薬、認知行動療法といった様々な治療法の確立により、社会復帰や健康的な生活を取り戻すことは十分に可能となりました。
この記事では、アルコール依存症の治療方法やその具体的なプロセスについてお伝えします。
目次
1. アルコール依存症は治るの?
結論から言うと、アルコール依存症からの回復は可能です。
正確に言えば、依存症の「完治」は出来なくても「社会復帰」 は可能だということです。
アルコール依存症は、飲酒のコントロールが自分で出来なくなる病気です。
そのため再び自制して飲めるようになることは、現時点では不可能とされています。
アルコール依存症の治療とは「禁酒の継続」を目標としています。
現在はアルコール依存症に対する様々な治療方法が確立されています。
「依存症を治したい」という本人やご家族の意志さえあれば、アルコールに依存しない健康的な生活や社会復帰を目指すことも十分可能なのです。
2. アルコール依存症に効果的な治療法とは
ここでは、いくつか代表的なものを紹介させていただきます。
①重度の場合は、入院治療
・身体合併症や離脱症状により日常生活に支障がある
・認知機能の低下や抑うつ状態にあり、自分で考えて
行動できない
・治療のため家族と距離を置く必要がある
このような症状の重い方は入院療法、通院療法が一般的です。
最初は離脱症状を安全に管理し、健康が維持できたらARP(アルコールリハビリテーションプログラム)によって生活リズムを整えていきます。
そして勉強会などを通じ「アルコール」や「依存症」の知識を身に付けながら、退院後の生活に向け継続可能な禁酒計画を立てていきます。
プログラムの内容は、勉強会だけではありません。
運動などを含めた作業療法や、依存症当事者同士による自助会なども用意されています。
退院までの2-3ヶ月を通して、禁酒の習慣や健康的な生活、さらには社会復帰に必要な協調性を育んでいきます。
退院後も、継続的な通院・通所は必要となります。
②軽度の場合は、薬物治療
離脱症状や認知機能の低下が少なく、日常生活に大きな支障がない方は投薬治療も可能です。
薬物療法には大きく分けて抗酒薬と抗酒補助薬の二つがあります。
まず、抗酒薬とは「アルコールを全く受け付けない体質」にする薬です。
代表的な抗酒薬には「シアナマイド」や「ノックビン」といったものがあります。
これらの薬を服用すると、飲酒することで頭痛や吐き気、動悸といった症状が出るようになります。
そうすることで、主体的に「飲みたくない」と思わせ、禁酒をサポートします。
一方、抗酒補助薬とは中枢神経に作用して「飲みたい」と思う気持ちを抑える薬です。
代表的な坑酒補助薬には「レグテクト」や「アカンプロセート」といったものがあります。
抗酒薬ほど強い効果は期待できませんが、十分に禁酒継続の助けとなり得ます。
③依存症と向き合う心理療法
通院治療、投薬療法の他にも、臨床心理士等による心理療法・カウンセリングも効果的です。
ここでは最も代表的な心理療法である認知行動療法について紹介します。
認知行動療法とは、お酒に対する考え方や行動を自分自身で見直すことで、飲酒問題の根本的な原因へアプローチする治療です。
特にアルコール依存症の患者は、自身の飲酒問題を過小評価したり、正当化したりする傾向があります。
これらの偏りを自分自身で見直すことで、継続的な禁酒をサポートしていきます。
認知行動療法によって、依存症者が抱えていた悩みや生きづらさを解消できることもあり、より本質的な解決が期待されています。
3. アルコール依存症の家族ができること
アルコール依存症を克服するためにはご家族の協力も不可欠です。
ここではご家族の皆さまに向けて三つのアドバイスをさせていただきます。
①家族にアルコール依存の疑いがあったら
家族にアルコール依存症の疑いがあったら、まずは専門医療機関や精神保健福祉センター等に相談をして下さい。
依存症の回復には専門家による適切な治療が不可欠であり、身内で解決しようとすると、かえって問題が大きくなってしまうこともあります。
アルコール依存症は「否認の病」と呼ばれ、自身が依存症であることを認めがらない病気です。
例え「アルコールをやめたい」と本人が思っていたとしても、飲酒への強い欲求から正当化してしまうことがあります。
家族や医師に対して攻撃的な態度を取ってしまうことも珍しくありません。
ご家族の皆さんが医療機関への受診を勧める際には、決して高圧的な態度で強制せず、「当事者の気持ちに寄り添う」ことを大切にして下さい。
②家族がアルコール依存症と診断されたら
実際にアルコール依存症と診断されたら、ご家族の皆様も依存症の正しい知識を身につけましょう。
依存症のリハビリ過程において、ご家族の協力は非常に重要です。
アルコール依存症当事者を抱えたご家族が、様々な飲酒問題に巻き込まれ、精神的に疲れ切ってしまうことも頻繫に起こっています。
そうならないためにも、まずはご家族自身が「アルコール依存症」という病気について、そして当事者への対応について学ぶことが大切です。
また、ご家族自身が心のケアを受けることも忘れてはいけません。
専門医療機関の家族教室や自治体の家族向けのセミナー、自助グループの家族会などに足を運ぶことをお勧めします。
アドバイスを受けたり、悩みを相談したりすることができるからです。
家族向けセミナーは、以下のサイトを参考にしてみてください。
③治療中の注意点
先にも述べた通り、アルコール依存症の治療は「断酒の継続」です。
お酒のない生活を築くことが必要となります。
そのためには、ご家族をはじめ、職場などの周囲の方々の理解が不可欠です。
時には厳しく接することも必要です。
「お酒で起こした問題の尻拭いをする」「飲酒してしまったことを隠す」といった行動をとってしまうご家族もいらっしゃいます。
しかし、これらは当事者の飲酒を助長してしまう行為です。
こうした行為は「共依存」と呼ばれます。
たとえ本人のためだと思った行動でも、「共依存」とならないよう厳しく接することが大切です。
お酒に関する話題を目の前でしない等、くれぐれも飲酒を助長しないように努めましょう。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はアルコール依存症について、治療法を交えながらご紹介させていただきました。
改めて内容について整理します。
- ①アルコール依存症からの回復は十分可能。
- ②入院治療、投薬治療、心理療法など様々な治療プログラムがある。
- ③回復にはご家族の理解と協力が不可欠。
アルコール依存症からの回復への道のりは決して短くありません。
しかし、社会復帰や健康的な生活を取り戻すことは十分に可能です。
自分たちで問題を抱え込まず、まずは専門医療機関や福祉施設などにご連絡ください。
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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会』を開催しております。
依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。
・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)
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参考:
・松下幸生先生に「依存症」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
ライター名: 田中瑞樹