2018/11/27

ゲーム依存症で高校中退? 当事者家族の経験から伝える2つの対策

学校,教室

「息子がゲーム依存症で高校を休んでいます。どうすれば良いでしょうか?」

あなたはこうお悩みかもしれません。

ゲーム依存症になると、その当事者も「やめたいけどやめられない気持ち」で苦しみ、昼夜逆転の末から中退するという話をしばしば耳にします。

この記事では「ゲーム依存症で高校中退をした方」の家族に向け、家族ができることについてお伝えします。

私自身、ゲーム依存症当事者の家族経験があります。

今回の内容が、皆さまのお役に立てれば幸いです。

目次

1. ゲーム依存症の症状と高校中退の関係

ゲーム障害(ゲーム依存症)は、持続的・反復的なゲーム行動により、結果として不登校などの問題を引き起こす障害です。

ゲーム依存になると、自分の意志でやめることが非常に困難になります。

そのため、不登校や中退などのリスクが高まります。

中退について興味深い研究も報告されています。

アメリカのニューヨーク州のある大学で、留年・退学者を対象にを調査が行われました。

その結果大学中退者の52%がインターネット依存の状態だっただろうと報告されています。

こちらの研究ではインターネット依存傾向の学生が半数以上という結果でしたが、この中にも一定数インターネットゲームにのめりこみ、ゲーム依存症になっている学生もいるのかもしれません。

このようにゲーム依存症と高校中退は切っても切れない関係だと考えられています。

なお、ゲーム依存症が高校中退の理由になり得る主な要因として、以下の2つが挙げられます。

①夜のゲーム習慣で、朝起きられず学校に行けない

オンラインゲームでは、他者と交流しながらゲームを進めます。

オンラインゲームは、夜11時頃~深夜1,2時頃に多くの人が参加し、活発にやり取りが行われます。

その時間帯には、仕事帰りの社会人や学校や塾終わりの学生などで非常にぎわうことになります。

そして協力プレイ等をしながらゲームを一緒にやるのです。

オンラインゲームの魅力は単にゲームが面白いだけでなく、誰かとつながれる喜びもあるのかもしれません。

深夜にゲームをすることで、朝起きれないなどの問題が起こりやすいでしょう。

そのため、学校に行けなくなり出席日数が足りず留年する依存症当事者もいるといわれています。

②ゲーム依存症になり脳自体が変化してしまう

ゲーム依存症と脳の関係についてはまだまだ研究の余地があり、分かっていないことが多いです。

しかし、ゲーム依存症になることで「理性の脳」と呼ばれる前頭前野の機能が低下することが研究や臨床現場等から報告されています。

これにより、「ゲームをやりたい」という気持ちを抑えられないといいます。

またゲーム依存症に特化した研究ではありませんがネット依存症ではネットを過度に使い続け、依存症になった方の中には脳の神経細胞が収縮しているという報告もあります。

多かれ少なかれゲームをすることで脳に悪影響を及ぼすかもしれません。

脳の変化により、勉強等をしても成績が上がらず学力低下を引き起こし留年という可能性もあります。

ゲーム依存症になることで少しずつ社会生活が送れなくなり、高校中退になる方も一定数います。

2. 事例:高校中退したAくんの話

ここからは実際の事例をご紹介します。

私が関わったことのある子の事例です。

高1で高校中退をしたA君は、もともととても真面目で内気な子でした。

中学ではいじめにあい、不登校を経験しています。

しかし、人と話すことは好きで「高校には行きたい、高校で友達が欲しい」と願い猛勉強の末、高校に進学します。

高校には進学したものの、中学のいじめの経験が忘れられず人とうまくコミュニケーションが取れません。

彼の願いであった「友達が欲しい」という思いと裏腹に、高校入学後は一人で過ごしていました。

孤独感から「勉強の合間の暇つぶしだから」と考え、ゲームをはじめました。

始めたゲームではオンラインで協力プレイができるゲームでした。

瞬く間に友達ができ、A君は孤独でなくなりました。

「友達にいいところをみせたい。そしたら友達と認めてもらえる...。」

そう感じたA君は次第にゲームにのめりこんでいきます。

もともと真面目なA君です。

ゲームを必死に練習し、上手になりました。

そして徐々に「ゲームを自分の意志ではやめられない」状態になっていきます。

ゲームがやめられず、夜中までゲームをやり続け、朝起きられないのです。

次第に学校に行けなくなりました。

A君もこのままではまずいと分かってはいます。

しかし、ゲームにのめりこんでしまった結果、学校に行けない日々が続き、友達を作るチャンスを作れず、高校の勉強にもついていけなくなってしまいました。

勉強についていけないことの恐怖、そして学校での孤独な日々に思いをはせ、学校に行けなくなりました。

A君は出席日数が足りず留年しました。

彼は留年してしまったショックから高校を中退してしまいました。

A君はゲーム依存症になる前から、不安や孤独感を抱えていました。

そうした「生きづらさ」がゲーム依存症、そして高校中退という事態を引き起こしたように思えます。

3. ゲーム依存症で高校中退した後の2つの対策

高校中退をしたゲーム依存症当事者に対して周囲ができることは何でしょうか?

①学校に行けなくても、その先の選択肢があることを伝える

高校中退をしてしまうと、その先の大学や就職で苦労するのではないかと不安になるかもしれません。

しかし、高校中退をしても、通信制高校等に編入し、卒業することで高校卒業の資格を取る方法もあります。

また、高校中退をしても、その先の大学等に進学したい場合は、「高卒認定試験」を取得し、大学に進学する方法もあります。

高卒認定試験:http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/

私の弟は、高校中退後この「高卒認定試験」を取得して大学受験をしました。

高卒認定試験は現在は夏(8月頃)と秋(11月頃)に行われています。

チャンスは2回あり、かつ過去問も文部科学省で公表されています。

弟も過去問を解きながら高卒認定試験に挑戦しました。

②ゲーム依存症になる前から抱えた苦しみに寄り添う

ゲーム依存症になった人の中には、一時的な「非難場所」としてゲームを選択しているケースが考えられます。

挫折経験や喪失体験の苦しさから逃れるためです。

それが次第に自制できなくなり、依存症へと繋がってしまうのです。

また、ゲームに熱中する以前から、孤独感を紛らわすためにゲームをはじめる場合もあります。

ゲーム依存症の治療の前に当事者の苦しみに寄り添い、今までの傷を癒していく必要があります。

カウンセラーの方や専門病院の精神科医、臨床心理士の方などに話を聞いてもらう、あるいはセラピーを受けるなどして心の傷を癒していく必要があるでしょう。

4. まとめ

  • ①ゲーム依存症と高校中退には強い関連性があります。
  • ②ゲーム依存症になるまえからゲーム依存症当事者は苦しみを抱えているかもしれません。
  • ③ゲーム依存症者が中退した場合、中退してしまっても道があることを伝えてあげて下さい。

ゲーム依存症は心の病気です。

ゲーム依存症になる前から苦しみ、その苦しみから逃れようとした結果、ゲーム依存症になってしまったかもしれません。

依存症治療にとどまらず、それまでの苦しみを理解してあげる必要があります。

私たち、ヒューマンアルバでは依存症回復に向けた無料相談を行っています。

当事者やその家族として依存症を経験したスタッフが、一人ひとりに寄り添い対応しています。

どんな小さなお悩みも、あなたの意見を尊重しながら、回復に向けて共に歩んでいきます。

お気軽にご相談ください。

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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会を開催しております。

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ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)

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参考:

張亜権,松野良一(2017)中国におけるネット依存症青少年の回復教育プログラム-南昌鴻傑少年学校を事例として-

・春日伸予,伊藤克人(2004)『芝浦工業大学生のインタ ーネット依存に関する調査研究』芝浦工業大学研 究報告 人文系編 38(2)1.

・樋口進『スマホゲーム依存症』(2018)内外出版社

ライター名: 木原彩

※紹介した事例は、記事の趣旨を損なわない範囲で、個人の特定ができないように一部内容を変更しています。また、本人やご家族の同意を得た上で記載しています。