依存症における共依存|予防・対策・脱却・回復方法
「依存症になってから人が変わったようです...。私がしっかりケアしないと。」
「旦那のアルコール依存で生活はめちゃくちゃです。でも心配だから別れられないんです。」
依存症や心身のケアが必要な人が身近にいるあなたは、当事者への日々のケアやサポートで疲弊していることでしょう。
しかし、その献身的な行動の中に「共依存」という病理が潜んでいるかもしれません。
今回はそんな依存症や心身のケアが必要な人が身近にいるあなたに向けて、「共依存」そして「共依存からの脱却方法」についてお話していきます。
少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。
目次
1. 共依存とは
共依存とは「他人の問題を自分の問題のようにとらえ、相手にのめりこんでしまう状態」を指します。
・本人に代わり、休みの連絡をしてあげる。
・お酒を飲んだ後の片付けを手伝う。
・お金の工面をしてあげる。
など、本人が責任を果たすべき問題を当事者以外の人が背負ってしまう状態です。
言い方は悪いですが、このような尻ぬぐいをすることで当事者が依存症から回復する機会を奪ってしまっている場合があります。
これが共依存の典型的な例です。
2. 共依存の原因・メカニズム
なぜ共依存になってしまうのでしょうか?
その背景には尽くしている側にも原因があると考えられます。
例えば、尽くしている側が子どもだった頃に家庭等でつらい経験をし、心の傷がある場合、アダルトチルドレン等である場合があります。
「アルコール依存症者がいる家族」
「両親や嫁姑の仲が悪い家族」
「経歴や学歴のみを重視し、外面を気にする家族」
家庭が安全な場所でなかった家族の中で育ち、傷ついた子どもたちのことです。
これらの家庭で育ったことで、「自分は生きていていいのだ」という自己受容感を感じることなく大人になります。
それは子どもにとって、非常に深い傷を残します。
また、過干渉な親の子どもがアダルトチルドレンになる可能性が精神科医である斎藤環さんの研究からわかってきました。
アダルトチルドレンの子は複雑な家庭環境から、「私は愛されない」などと感じてしまい、自己肯定感が低くなってしまいます。
そのため、誰かの役に立つことが自己存在を証明する唯一の手段と考えてしまうのです。
先ほど挙げた事例のように、アルコール依存症の夫に献身的に尽くしている妻も「誰かに必要とされている」という役割に強くあこがれ、夫の世話をしている可能性が考えられます。
3. 共依存がもたらす危険性
共依存には、どのような危険性があるのでしょうか?
1つには、当事者を支援しているつもりが、かえって依存症を悪化させているケースです。
先ほどのアルコール依存症の例ではアルコール依存症の夫と妻との間で共依存関係になるとお話ししました。
共依存関係になることの問題点は、そうした関係になることで、依存症が回復しなくなってしまうことです。
尽くす側である妻は、「夫を放っておけない。だから何とか彼を支えなきゃ」と考えます。
ただ、一見その人のためを思ってしているこれらの行動も、アルコール依存症の本人が「お酒やめないとだめだ」と思うきっかけを奪ってしまいます。
共依存状態(この場合、妻が尽くすこと)になることで、「どうしてあの人は変わってくれないんだろう...」と悩んだり、尽くすことにだんだんと疲れが出てくる可能性があります。
また、夫の尻ぬぐいに多大な時間を費やすことで、「自分」や「家族のこの先」のことを考えられずにどんどん視野が狭くなる場合もあります。
視野が狭くなることであなたと依存症当事者との関係や、依存症によって生まれた問題を客観的に見られなくなります。
つまり依存症によって問題が引き起こされていることに気づかない可能性があるのです。
4. 共依存の予防、対策、脱却方法とは?
共依存にならないためには、何に気を付ければよいのでしょうか?
ここでは代表的な4つのステップをご紹介します。
①共依存であることを認める
大切な家族が、アルコールなりギャンブルなり、何かに依存しないと生きられないという大変な状況だと、どうしても尽くしたくなってしまう気持ちもわかります。
しかし、その行動は本当に相手のためになっているのでしょうか。
もし依存症の家族のために自分が借金を返したり、そのため自分が体を壊すなど、自らを犠牲にして尽くし続けているのなら、「共依存状態にあるのかもしれない」と疑いましょう。
そして、専門機関など第三者に適切なサポートを求めるようにしてください。
②共依存から脱却するために自分と向き合う
なぜ共依存になってしまったのでしょうか?
その背景に過去の傷や自己肯定感の低さが関係している可能性があります。
例えば、共依存状態にある人は「自分が我慢すれば何とかなる」と考えてしまう癖を持っているのかもしれません。
また、「依存症の夫を世話する妻」という役割によって、「誰かに必要とされている」という感覚を得ているのかもしれません。
まずは、自分の考え方や物事のとらえ方に癖がないか、振り返ってみてください。
上記のような考え方の癖がある場合、カウンセリングや認知行動療法などを通して、変えていくことも可能です。
③他人を頼る
自分と向き合うと決めたとはいえ、一人で向き合うことは現実的ではありません。
どうか一人で抱え込まず、カウンセラーの下でカウンセリングを受けるなどして自分のケアにも目を向けてみましょう。
カウンセリングを受ける中であなたの過去の傷をいやすチャンスが生まれ、それがきっかけであなたの周りの人へも良い影響を与えるでしょう。
「実際にカウンセリングを受けてみたい」と思われた方は、一度下の依存症専門病院リストからお近くの病院を探してみるとよいかもしれません。
参考: 依存症専門病院リスト
④正しい知識を身につける
共依存について正しい知識を身につけることも大切です。
どういう状況が共依存なのか知っていくことで、あなた自身もあなたの周囲の人にとっても良い影響を与えます。
とはいえ、一人で知識を身につけるのには限界もあるかと思います。
お気軽に弊社にご連絡ください。
5. まとめ
- ①共依存は「他人の問題を自分の問題のようにとらえ、相手にのめりこんでしまう状態」です。
- ②依存症は心の病気で、依存症当事者の心の弱さのせいでも、周囲の人のせいでもありません。
- ③当事者たちは依存症になる前から苦しみ、その対処行動として依存行為を繰り返してしまった可能性があります。
当事者のそばにいると、どうしても「彼(彼女)のために私が何とかしなきゃ」と思ってしまいます。
そうした気持ち自体は、全く間違ったものではありません。
しかし、問題を少しでも早く解決するためにも、ぜひ依存症を専門とする機関にご相談下さい。
私たちの施設では、依存症回復に向けたプログラムはもちろん、無料相談も行っています。
当事者やその家族として依存症を経験したスタッフが一人ひとりに寄り添った対応を心掛けています。
・どう当事者に接していいかわからない。
・依存症の家族に尽くしすぎて疲れてしまいました。
あなたの意見を尊重しながら、ともに回復に向けて歩んでいきます。
お気軽にご相談ください。
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社名: 株式会社ヒューマンアルバ
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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会』を開催しております。
依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。
・つらい思いを吐き出す場として
・状況を変えていく学びの場として
ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)
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参考:
・斎藤学(2018) 毒親と子どもたち 論文特集「親子関係の解剖学~その闇に迫る」日本財団Webマガジン「みらい」VOL2 pp.1-8
ライター名: 木原彩