アルコール依存症における「精神依存」「身体依存」とは
「最近、夫の酒量が多くなっていて心配。」
「もしかしたら息子はアル中かも...。」
「お酒を飲めない状況のときに手が震えている。」
アルコール依存症には特徴的な症状があります。
症状を把握することで、早期の発見と治療につながるかもしれません。
それでは、どんな症状が出てくるとアルコール依存症の可能性が高いといえるのでしょうか。
この記事を参考に、皆さんあるいはご家族の行動を振り返ってみましょう。
当てはまるようであれば、なるべく早く専門の病院や施設にご相談して下さい。
目次
1. アルコール依存症とは
アルコール依存症とは、日常生活に支障をきたしているにもかかわらず、お酒がやめられず、自分の力だけではコントロールができない状態の病気です。
アルコール摂取時に脳内放出されるドーパミンによる機能異常が原因です。
実は、お酒を飲む誰もがなりうる精神疾患であり、病院に行けば正式な診断書も出ます。
正しく治療すれば回復することができるので、早期の発見と治療が不可欠です。
アルコール依存症かどうかを知る方法のひとつに、WHOの調査研究により作成されたスクリーニングテストがあります。
以下は、アサヒビールの公式サイトによるチェックリストになります。
依存症の疑いのある本人の行動を思い返しながら、試してみてください。
診断の結果、「アルコール依存症疑い群」と判定されたら、専門施設や専門家へ相談するようにしましょう。
2. 「精神依存」と「身体依存」
アルコール依存症の状態は、大きく「精神依存」と「身体依存」の2つに分けることができます。
習慣的に多量の飲酒を続けることにより、脳や身体反応に変化が起き、自制が効かない依存状態に陥っていくのです。
3. 渇望が止められない、アルコールの「精神依存」
「精神依存」による症状例:
・お酒への強い欲求が起こる、飲まないと不安に襲われる
・お酒を飲みはじめると適量で抑えられない
・ほぼ毎回記憶がなくなるほど飲んでしまう
・お酒がないと家中を探し回り、夜中でも買いに行く
・「もう飲まない」と宣言しても、また再び飲んでしまう
・飲んだ次の日は辛く、朝からお酒を飲むことがある
「精神依存」とは、アルコールへの強い欲求が湧き、それを自制できない状態やお酒に頼ってしまっている状態のことです。
習慣的にアルコールを摂取することで、耐性がつき、量が増えます。
次第に「適量では満足できない」「アルコールがないと物足りない」「アルコールなしではいられない」という抑制がきかない状態になっていきます。
アルコールの精神依存が形成されると、お酒がないと落ち着かないようになります。
お酒がないか家中を探し回ったり、お酒を買うためだけに外出したりするなど、今までと行動の仕方が変化していきます。
仕事終わりの一杯、帰宅時の一杯、風呂上がりの一杯...
このような理由をつけ飲んでいると、「そうしなければ」といった脅迫概念が形成されていきます。
4. 離脱症状が起こる、アルコールの「身体依存」
身体依存による症状例:
・お酒が飲めないと手や体が震えるようになる。
・お酒を飲むと手や体の震えが治まる
・飲んでいないと大量に汗をかく、動悸が激しくなる
・飲酒をやめると1~2日後に痙攣、発汗(特に寝汗)、
吐き気、嘔吐といった症状が出る
・飲酒していない時、幻覚や幻聴が生じる
「身体依存」とは、アルコールが切れることで、手足のふるえや動悸、発汗など体に変化が起こる状態です。
離脱症状や禁断症状が見られるようになります。
もともと体は、アルコールを摂取すると呼吸や脈拍などが速くなるというような状態になります。
ところが、身体依存になると、アルコール摂取の状態が普通の状態であると体がみなすようになってしまいます。
その結果、アルコールが切れると「離脱症状」と呼ばれる症状が現れるようになります。
離脱症状とは、アルコールが切れてくると脈拍が速くなったり、発汗、イライラ、頭痛や手が震えたりする症状のことです。
飲酒をやめて数時間に出現する症状を「早期離脱症状」と言います。
飲酒をやめてから2〜3日で出現する症状を「後期離脱症状」と言います。
大量の発汗、幻覚、見当識障害、興奮などの他に、発熱や震えがみられることもあります。
5. まとめ
- ①飲酒の量と頻度のレベルが高い。
- ②一度飲みはじめると、酔いつぶれるまで止まらない、よく記憶がなくなる。
- ③飲酒のせいで遅刻や欠席など日常生活に支障が出ている。
- ④酔いが覚める前にまた飲まないと体が辛く、震えや発汗などの身体症状も出てくる。
- ⑤飲酒による大きな失敗や迷惑を繰り返している。
アルコール依存症は否認の病と言われるほど、本人の自覚が難しい病気です。
早期発見、早期治療のためにも、家族や周囲がアルコール依存症の症状を知り、疑いがある場合は周囲の人から専門家への相談など、働きかけることが重要です。
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参考:
・情報ボックス アルコール 5.『アルコール依存症』久里浜医療センター
ライター名: 宮口まりこ