2018/07/10

依存症の親はアダルトチルドレンを生み、親子ともに生きづらさを。

アダルトチルドレンの存在はご存知でしょうか?

 

アダルトチルドレンとは、「アルコール依存症者をはじめとする機能不全家族の中で育った子どもたち」を指します。

 

少しずつその存在が認知されてきていますが、あまり知らない方のほうが多いと思います。

 

この記事では、依存症家族とアダルトチルドレンについてお話していきます。

 

目次

 

1. アダルトチルドレン|生きづらさの正体

アダルトチルドレンは、元々「アルコール依存症の家族の中で子ども時代を送った子どもたち」を指していました。

 

現在は、アルコール依存症の家族だけにとどまらずアルコール依存症の親がいた家族も含め、機能不全家族の中で育った子どもたちのことを指します。

 

アダルトチルドレンの特徴として、苦しい家庭で育った子ども時代の経験により、健全な学びの体得が難しい、自己認識の歪みや対人関係のトラブルなどの「生きづらさ」を抱えることがあります。

 

青年期・成人期での精神障害の発症のリスクも高く、暖かな過程で育った人に比べ、抑うつ状態になりやすいといわれています。

 

2. アダルトチルドレンと依存症・世代間連鎖

 

生きづらさを抱えやすいアダルトチルドレンは、世代間連鎖するといわれています。

 

ここでの世代間連鎖は、「虐待や貧困といった問題が世代を超えて伝わっていくこと」を意味します。

 

例えば、アルコールやギャンブルの依存症である父母を持つ子どもが大人になったとします。

 

そうした場合、依存症の家庭で育った彼らはアダルトチルドレンになる可能性が高いです。

 

依存症の家庭で育った子どもが大人になり、「生きづらさ」や苦しみを抱えたとします。

 

その際に、生きづらさや苦しみから逃れるために、依存症等になることも考えられます。

 

3. 母の事例:生きづらさは世代を超える

ここから実例を交えてお話しできればと思います。

 

私は今アダルトチルドレンの記事を書いていますが、かくいう私もアダルトチルドレンの傾向があります。

 

少し長いですが、実際に「依存症の家庭で育った母」と「アダルトチルドレン傾向のある母と私自身」についてお話していきたいと思います。

 

私の母方の祖父はアルコール依存症でした。

 

もともとは仕事熱心で、家庭を大事にする素敵な父だったそうです。

 

しかし、母が小学生の頃から仕事がうまくいかなくなりました。

 

(祖父は精密機械の会社の幹部でした。)

 

その頃から、ストレス発散や憂さ晴らしのために飲酒が増えたそうです。

 

そして次第にアルコール摂取が増えていき、アルコールを飲むために家のお金を使う、欠勤する日が続いたといいます。

 

祖母はそんな夫に対して、厳しい言葉を何度も投げかけ、家庭内では喧嘩が絶えなかったとそうです。

 

会社の経営もどんどん悪くなっていきます。

 

会社が多額の借金をしていたこともあり、家に借金の取り立てが来ることもあったそうです。

 

母は小学校中学年の頃に、母の親戚の住む地方に預けられたそうです。

 

その時の孤独感や悲しみは今になっても忘れないといいます。

 

母が中1の頃に祖母とと祖父は離婚しました。

 

母は祖母から「ねえ、別れた方がいいかな?」と相談されたそうです。

 

母は「別れた方がいいと思う」といい、別れることになりました。

 

母は幼少期の孤独感や安定しない家庭で育ったため、「家庭がどんなものか?」が分からず大人になったそうです。

 

「生きづらさ」を抱えたまま大人になりました。

 

母のもとで育った私も「生きづらさ」や苦しさを抱えてきました。

 

安定しない家庭で育った母は、心配性です。

 

おそらく幼少期に突然地方に預けられたこと、借金の取り立てが突然自分の家に来る恐怖なども関係していると思います。

 

また、いつ両親が喧嘩をするのだろうと不安だった気持ちもあったのだと思います。

 

おそらく母はそんな不安を少しでも軽くしたかったのでしょう。

 

私のことを全て知っておかなければと、私の進路について「こうしたほうがいい」と言うことがありました。

 

そして私自身、その通りに生きてきたような気がします。

 

私は小さいころから監視されているように感じながら暮らしてきました。

 

中学生の頃にケータイを買ってもらいましたが、メールは母が全部チェックしていたのです。

 

心配するあまり、私に成りすまして友達にメールをしてしまうこともありました。

 

私が何かを「やりたい」と伝えても「どうせ失敗するんだからやめときなさい」や「心配なの、だからそんなことやっちゃだめよ」と言われました。

 

そのため私は「『○○したい』と思って生きてはいけないのだ」と感じるようになりました。

 

私は中学生・高校生の頃は常に生きづらさを抱えていたように思います。

 

祖父のアルコール依存症から始まり、母は生きづらさを抱え大人になりました。

 

その傷が癒されないまま、私が生まれました。

 

「自分が暖かな家庭で育っていないからこそ、どう子どもを育てていいのかわからない」という苦悩を抱え、私を育てるうちに「すれ違い」が起こり、私自身も生きづらさを抱えた時期がありました。

 

ささいなきっかけによって、自分だけでなくその先の子どもや孫が「生きづらさ」を抱える可能性があるのです。

 

4. アダルトチルドレンからの脱却するには?

 

アダルトチルドレンから脱却する方法はあるのでしょうか?

 

大きく分けて3つあると考えられています。

 

①カウンセリングを受ける

アダルトチルドレンの人は現在の生活でも「生きづらさ」を抱えていることもあります。

 

人間関係で、人との距離感をうまくつかめず孤立してしまうことがあるでしょう。

 

なれなれしいと周囲から引かれてしまったり、トラブルに巻き込まれたりすることもあるでしょう。

 

現在の悩みがあれば、それらを解きほぐしていく必要があります。

 

臨床心理士等の下でカウンセリングを受け、自分の現在の問題等を整理することで、今の生活での不安が少しずつ減っていくかもしれません。 

②心理療法を受ける

アダルトチルドレンは幼少期のトラウマ体験や不安定な家庭で育ったことで、傷つき経験をしている可能性があります。

 

その傷を癒していく必要があります。

 

トラウマ経験が深刻な場合、EMDR等のトラウマケアを行い過去の体験の整理を行う場合もあります。

 

EMDRとは、「眼球運動による脱感作と再処理法」と呼ばれ、眼球運動を利用して外傷的記憶を処理し整理するトラウマケアの1つです。

 

カウンセリングだけでなく特定の心理療法を行うことで、過去の傷つき経験が緩和していく可能性があります。

③自助グループに参加する

自助グループはある経験や障害を持つ者同士が互いに励まし支えあいながら、苦しみを様々な形で克服していくための集団です。

 

犯罪被害にあった被害者の自助グループ、グリーフケアを目的とした自助グループ、そして依存症等の苦しみを抱えた人の自助グループなどがあります。

 

自助グループに参加することで、普段口にすることができない苦しみを口にすることができます。

 

そして周囲に聞いてもらえた経験から「自分は受け入れてもらえる」という自己受容感が高まるかもしれません。

 

同じような経験をした人との出会いを通して「苦しいのは自分一人じゃない」と安心し、孤独感が緩和されていくと思います。

 

自助グループに通い続けることで、仲間とともに自分の経験と向き合い、苦しかった過去の経験に意味づけしていくことができるかもしれません。

 

参考:アダルト・チルドレン・アノニマス

 

5. まとめ

  • ①アダルトチルドレンは「家庭が安全な場所として機能しない家族の中で育った子どもたち」のことです。
  • ②アダルトチルドレンは、世代を超えて連鎖する場合があります。

  • ③症状の緩和には、カウンセリング、心理療法、自助グループに通う等の方法があります。

 

依存症は心の病気です。

 

そして、依存症になる背景には、本人が抱えている生きづらさが関係している場合が多いです。

 

今回ご紹介したアダルトチルドレンも、これにあたります。

 

依存症治療では、依存症の治療はもちろん、当事者が抱える「苦しみ」を癒していく必要があります。

 

私たちヒューマンアルバでは、依存症当事者の方に向け様々な治療プログラムを提供しています。

 

当事者やその家族として依存症を経験したスタッフが、一人ひとりに寄り添い対応しています。

 

どんな小さなお悩みでも構いません。

 

あなたの意見を尊重しながら、ともに回復に向けて歩んでいきます。

 

ぜひ一度ご相談ください。

 

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ヒューマンアルバでは、定期的に『家族会を開催しております。

 

依存症者を回復につなげるためには、まずご家族が対応を変えていく必要があります。

 

・つらい思いを吐き出す場として

 

・状況を変えていく学びの場として

 

ぜひ、ご活用ください。 (お申し込みはこちらから)

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参考:

アダルトチルドレンを生む「世代間連鎖」とは(2018.03.14)|一悟術

・緒方明『アダルトチルドレンと共依存』(1996)誠信書房

・西尾和美『アダルト・チルドレン癒しのワークブック本当の自分を取りもどす16 の方法』(1998)学陽書房

依存症者に対する自助活動の有効性|厚生労働省

熊野宏昭 パニック障害に対するEMDRの効用と限界 東京大学大学院医学系研究科

 

ライター名: 木原彩