アルコール、薬物などの依存症と重複障害
重複障害について、ご存知ですか?
「1人の人に2つ以上の障害があること」を重複障害と呼びます。
つらいトラウマを経験し、PTSDという精神障害を発症、その苦しみから逃れるようとした結果、依存症になってしまうケース等です。
また、アルコール依存症等になった後で、うつ病を併発するケースもあります。
どちらの場合も、重複障害を抱えた当事者は苦しんでいるかもしれません。
この記事では、依存症と重複障害の原因、治療法についてご紹介します。
目次
1. 重複障害とは|重複障害のきっかけと研究データ
厚生労働省では、重複障害を以下のように定義しています。
「視覚障害・聴覚または平衡機能障害・音声・言語または咀嚼機能障害・肢体不自由障害・内部障害・知的障害・精神障害などの障害を2つ以上を併せ有するもの」
重複障害の中には「依存症」と「精神障害」を併発するケースがあります。
精神障害の例としては、「統合失調症」「躁鬱病」「パニック障害」「PTSD(心的外傷後ストレス障害など)」などです。
重複障害は、依存症単独の場合に比べ、依存症の症状や精神疾患の症状が悪化する場合があります。
また、治療から脱落し、継続できないなどのリスクを高めます。
依存症の症状自体だけでもつらいのに、さらに精神障害を併発することで、当事者はより苦しみ、治療する意欲が減ってしまうからです。
なぜ依存症と精神障害は、併発し重複障害となるのでしょうか?
精神障害を発病した後、アルコールを大量摂取、または薬物を乱用する人がいます。
最新の研究でも、精神障害を持つ人は、そうでない人に比べ、アルコール・薬物依存になりやすいことが知られています。
その理由の1つに、精神障害で生じる「不安・ストレス・不眠・幻聴幻覚や妄想」といったつらい症状を何とか和らげようとし、アルコールや薬物を摂取・乱用してしまうからだと言われています。
反対に、薬物等を使用しているうちに、その後遺症として、うつ病等の精神障害を併発する場合もあります。
近年の依存症治療研究において、このように重複障害をもつ患者さんがいることが知られはじめるようになりました。
精神科医の方々が重複障害について調べたデータでは、依存症で入院1年半で退院した人のうち、50%以上が精神障害を併発し、その内16%が統合失調症だったと報告されています。
2. 依存症の重複障害の治療法
ここから治療法について、ご紹介します。
前提として、ご本人が抱える精神障害の症状が悪化しつらいときには、自分ひとりで何とかするのではなく、第三者を頼ってください。
病院の精神科やクリニック、保健所、精神保健福祉センター等が相談窓口になります。
①薬物治療
重複障害になり、依存症と他の精神障害を併発する場合、依存症の治療はもちろん、併発する精神障害を治療していく必要があります。
多くの場合、投薬治療により、併発する精神障害を緩和させる治療が行われます。
精神障害、例えばうつ病等の気分の落ち込みを緩和させるために、投薬治療を行うなどです。
こうした治療によって、精神障害が緩和され、依存症当事者の気持ちがいくらか楽になるでしょう。
②認知行動療法
認知行動療法は、病気の症状等や問題行動を改善するために、非適応的な行動パターンや思考パターンを変えていく治療法です。
精神障害をお持ちの方は、思考パターンに「歪み」があるとされます。
そうした思考パターンの「歪み」に気づき、検討→修正していくことで、その後の行動や気持ちを変えることができるといわれています。
③自助グループ
摂食障害や依存症など、同じ病気を持つ者同士が集まり、互いに励ましながら支え合う集団です。
互いに気持ちを語り合うことで、今まで抱えていた苦しみが癒されるかもしれません。
同じように苦しむ仲間との出会いを通して、自分は一人でないと実感ることもできます。
このように、いくつかの治療法がありますが、当事者の症状や状況に合わせて、組み合わせながら治療を進めていきます。
3. まとめ
- ①重複障害とは、1人の人が、2つ以上の障害を同時に抱える状態を指します。
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②重複障害を、当人もしくは家族内で解決するのは困難です。第三者を頼ってください。
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③重複障害の治療は、依存症の治療だけでなく併発した障害の治療も合わせて進めていきます。
依存症は心の病気です。
当事者は、依存症になる前から「生きづらさ」を抱え苦しんでいたかもしれません。
「心の痛み」や「苦しみ」に耐えられなかったからこそ、依存症になってしまった場合もあります。
依存症は、適切に第三者を頼ることで回復できる病気です。
私たち、ヒューマンアルバでは依存症回復に向けた様々な治療プログラムを提供しています。
当事者やその家族として依存症を経験したスタッフが、一人ひとりに寄り添い対応しています。
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参考:
・中田行重(2011)わが国におけるアディクション臨床の現在についての文献研究 関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床カウンセリングルーム
・池田朋広,森田展彰,梅野充,稲葉淳子(2010) 精神病性障害と物質使用障害の併存性障害について-精神病性併存性障害3症例への考察-.精神科治療学. 25(5). 573-581
ライター名: 木原彩